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令和元年6月21日(金)
11:00〜12:00 定時社員総会
13:00〜17:00 シンポジウム
17:15〜19:15 意見交換会
東京大学柏キャンパス 新領域環境棟FSホール
千葉県柏市柏の葉5-1-5
柏キャンパスへのアクセス(東京大学のホームページ)
つくばエクスプレス「柏の葉キャンパス駅」から,東武バス(西柏04または西柏03)「東大前」または「東大西」停留所下車.
※詳細は,東京大学のホームページをご確認ください.
総会の構成員は役員および代議員ですが,当学会員であれば総会を傍聴することができます
テーマ:「頻発する自然災害にどのように備えるか−役立つ災害地質の知識−」
正会員3,000円,学生会員2,000円(予稿集代を含む)
受付で会員証の提示にご協力くださいますようお願いいたします.
会 場:東京大学柏キャンパス内「プラザ憩い」
参加費:5000円
3.5時間(シンポジウムを聴講の場合)
CPDの登録にはジオ・スクーリングネット(https://www.geo-schooling.jp)をご活用ください
日本応用地質学会災害地質研究部会では,自然災害の発生に伴い,学会調査団の1員として現地調査を行ってきた.また,その調査に際しては日本地すべり学会と協力して活動をおこなってきた.本シンポジウムは,それらの経験を生かして,近年頻発する自然災害にどのように備えるかについて,最近の自然災害調査を総括したうえで,役立つ災害地質の知識について発表を行い,災害地質に関する研究成果を会員ひいては社会に還元することを目的とする.話題提供では,100名以上の死者が出た西日本豪雨災害(平成30年7月豪雨)について平成30年7月西日本豪雨災害調査団が取りまとめた成果(※)を中心に報告し,あわせて平成30年北海道胆振東部地震の調査結果の報告を含めて,頻発する自然災害にどのように備えるかを討論する.
(※当日は「平成30年7月豪雨災害(西日本豪雨災害)調査団報告書」を販売します(会員価格:4000円を予定))
シンポジウム「頻発する自然災害にどのように備えるか−役立つ災害地質の知識−」 | |
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13:00〜13:05 | 開会の挨拶:災害地質研究部会長 稲垣秀輝(株式会社環境地質) | 第1部 特別講演 |
13:05〜14:05 | 特別講演「空からみる地形災害・地すべり地形」 日本地すべり学会会長 八木浩司(国立大学法人 山形大学) |
第2部 話題提供1 |
14:05〜14:25 | 「西日本豪雨災害報告−中国地方土砂災害−」 調査団中国四国支部 加藤弘徳(株式会社荒谷建設コンサルタント) |
14:25〜14:45 | 「西日本豪雨災害報告−四国地方土砂災害−」 災害地質研究部会 西山賢一(国立大学法人徳島大学) |
14:45〜15:05 | 「西日本豪雨災害報告−岡山の洪水災害−」 応用地形学研究部会 品川俊介(国立研究開発法人 土木研究所) |
15:05〜15:15 | 休憩 | 第3部 話題提供2 |
15:15〜15:35 | 「平成30年北海道胆振東部地震報告−テフラ地帯の斜面崩壊−」 北海道支部 伊東佳彦(国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所) |
15:35〜15:55 | 「類似の災害と「やや不自然な自然災害」」 災害地質研究部会 高見智之(国際航業株式会社) |
15:55〜16:15 | 「ハザードマップの作り方と減災のためのアウトリーチ」 災害地質研究部会 松澤 真(パシフィックコンサルタンツ株式会社) |
16:15〜16:20 | 休憩 | 第4部 パネルディスカッション |
16:20 〜17:00 | テーマ「頻発する自然災害にどのように備えるか」 座長:災害地質研究部会長・災害調査団 副団長 稲垣秀輝(株式会社環境地質) パネリスト:特別講演者・話題提供者 |
17:00〜17:05 | 閉会の挨拶:西日本豪雨災害調査団 団長 鈴木茂之(国立大学法人 岡山大学) |
令和元年シンポジウムを開催いたしました.当日は176名の多数の参加をいただきありがとうございます.各講演の概要は以下のとおりです.詳細は特別講演およびシンポジウム予稿集としてまとめられています.是非ご一読いただけたら幸いです.予稿集の購入に際しては学会事務局までお問い合わせ下さい.
日本地すべり学会会長 八木浩司(国立大学法人 山形大学)
本公演では,八木先生が長年研究され,撮影されてきた災害地形,地すべり地形について「空から見る日本の地すべり地形」として取りまとめられた事例を中心に斜め写真を交えながら,様々なタイプの地形災害・地すべり地形について紹介された.紹介されたタイプは,典型的な地すべり地形を示す「火山および火山砕屑物堆積面の地すべり・山体崩壊」,「地震にともなう地すべり・山体崩壊」の他,移動域の面積に比べて滑落崖の比高差が小さい「重力性山体変形」の事例が示された.
「火山および火山砕屑物堆積面の地すべり・山体崩壊」では,鳥海山北面,月山西面,蔵王酢川源頭部の山体崩壊,白山西面,船形山北麓,五蔵岳北麓の地すべり地形が紹介された.
また,「地震にともなう地すべり・山体崩壊」では,青森県十二湖地すべり,青木湖を形成した地すべり,岩手・宮城内陸地震で発生した荒砥沢地すべり,ネパール・ゴルカ地震に誘発された氷河崩壊と岩盤崩壊が紹介された.
「重力性山体変形」では,七面山の楔状陥没,農鳥岳−上河内岳稜線の重力性変形,赤石岳西方の多重山稜,雪倉岳西面の重力性変形,知床半島三ッ岳−サシルイ岳中間稜線の陥没地形が紹介された.
また,航空機やUAVを利用した斜め写真はアウトリーチや防災教育など,一般の方々に地形災害や地すべり地形に興味をもって見ていただくのに,有効なツールであることが示された.ただし,斜め写真撮影では,撮影コースの事前検討や撮影のイメージトレーニングが重要であり,ただ単に綺麗な写真というだけでなく,苦労をして撮った写真だということを想像してもらいたい.なお,有人航空機による撮影が優れている場合とUAVの優れた点,それぞれの長所があるので,それを考慮して使い分けることが重要であることが強調された.
調査団中国四国支部 加藤弘徳(株式会社荒谷建設コンサルタント)
本公演では,2018年西日本豪雨における広島県の土砂災害状況の違いに着目して報告された.広島花崗岩分布域で発生した土石流は,礫径1m以上の巨礫を含み,巨礫により家屋が押しつぶされた被害がみられ,被災場所は谷の出口付近に集中している特徴があると報告された.
一方,高田流紋岩分布域で発生した土石流は,細砂・シルトなどの細粒砂からなり,土石流の押し流しにより家屋が破壊された被害がみられ,被災場所は,遠方まで達することが特徴であると報告された.
これらの事例より,地質・地形により災害形態は大きく異なるため,今後の災害対策には,正確に地形地質条件を把握することが必要であることが述べられた.また,災害対策の全てを行政が講じることには限りがあり,市民の防災意識向上が生存率向上のカギになると述べられた.
災害地質研究部会 西山賢一(国立大学法人徳島大学)
本公演では,2018年7月に発生した豪雨における四国地方での土砂災害について,愛媛県と高知県の事例を中心に報告された.
はじめに,愛媛県の事例では仏像構造線を境界とし北側に分布する秩父帯は,斜面崩壊が散発的であるのに対し四万十帯では,斜面崩壊が群発していることが報告された.また,宇和島市吉田町では滑落崖の比高20m程度の崩壊深度が深い崩壊が散発的に発生した事例報告がされた.いくつかの崩壊は,明瞭な谷地形ではない場所で崩壊が発生しており,地形判読による危険斜面の予測が難しいことが報告された.
次に,高知県の事例では高知自動車道の橋梁を崩壊した斜面崩壊が紹介された.崩壊発生地の両隣には明瞭な地すべり地形が分布するが,崩壊斜面そのものに明瞭な地すべり地形は認められなかった.
最後に,今回の事例のように地形から危険斜面の予測が難しい箇所にも,崩壊が発生する可能性があるため,今後詳細な検討が必要であることを示された.
応用地形学研究部会 品川俊介(国立研究開発法人 土木研究所)
本講演では,2018年西日本豪雨における岡山県での洪水災害について,小田川での洪水被害を中心に報告された.はじめに小田川の概要が紹介され,過去の洪水における浸水域との比較から,2018年の浸水域は想定と一致する過去最大級の浸水被害であったことが報告された.また破堤した箇所の地形の特徴や,越水した箇所は局所的に堤防が低くなっているといった洪水の原因となった地点の説明があった.
小田川の流域における土地利用の変遷をみると,たびたび浸水被害を経験しているものの,元々は自然堤防の上にあった学校・住宅が次第に低地に進出し,そこに道路と鉄道が整備されてきたことが紹介された.この様な状況は日本各地にみられることと思われ,非常に興味深いことであった.今後,どの様に市民に今回得られた知識を普及し,避難行動に役立てるかが課題であることが示された.
北海道支部 伊東佳彦(国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所)
本講演では,2018年9月6日の未明に発生した北海道胆振東部地震での斜面災害について報告された.胆振東部地震では地震で亡くなられた方のうち約9割が斜面災害によって亡くなられている.斜面崩壊は分類すると,主に土層すべり,岩盤すべり,岩屑すべりに相当する.土層すべりは震源地の北に多く,斜面には樽前(Ta-d2),支笏(En-a),恵庭(Spfa-1)のテフラが堆積しており,緩斜面においてもこれらのテフラをすべり面として崩壊していることが報告された.
また,胆振東部地震では,土層すべりが注目されたが,岩盤すべりも多数発生しているとのことである.代表的なものとしては日高幌内川での幅500m,長さ1,000mの巨大地すべりが挙げられる.他にも,写真では植生により判読できず,また表層崩壊にとらわれ見落としがちであるが,航空レーザー測量によるDEMから500程度の岩盤すべりが抽出されており注意が必要であることが述べられた.
災害地質研究部会 高見智之(国際航業株式会社)
本講演では,まず「類似の災害(場所も時代も異なるのに形態が類似した災害)」について,胆振東部地震や1958年十勝沖地震,熊本地震などの具体的な事例で多くの共通点があることが紹介され,様々な斜面災害の事例を収集し類型化し,実用的な防災上の有益な情報を取り出していくことが本学会の災害地質研究部会の活動の一つの方向であるとし,地震時の斜面災害の類型案などに具体例が提唱された.
次に,「やや不自然な自然災害(人為災害と呼ぶには根拠に乏しいが,自然災害と呼ぶには,少し微妙な人の行為が背景にある)」について,土取り場の切土法面のすべりや導水路トンネルに隣接した自然災害,上部斜面の旧道から地表水が流下し土石流化した例が紹介された.
そして,災害の類型化を進めていく中で,人為的な要素も重ね合わせたリスク斜面の抽出が実行的なハザードマップの作成に繋がる.そこから,防災減災の方針を検討してリスクマネジメントを行い,具体的な事前対応や土地利用のあり方を低減していくというアプローチ案が提案された.
災害地質研究部会 松澤 真(パシフィックコンサルタンツ株式会社)
本講演では,まずこれまでのハザードマップの多くが,急傾斜・地すべり・土石流などを対象に全国一律の手法で設定したものであり,避難経路が記載されていないなど,地域の特性や実際の崩壊危険箇所を見落としている可能性があることを指摘した.
そして,これらの課題に対して検討したハザードマップや,地域住民が活用できる防災マップの作成例が紹介された.その中で,住民参加による現地調査(土層調査)やシミュレーション動画,地元メディアへの掲載など,具体的な取り組みについて報告があった.
最後に,土砂災害に対するハード対策,深層崩壊などの大規模土砂災害に対するソフト対策は,基礎自治体では対応が難しいため,県・国なども交えた対策を検討する必要性について提言された.
座長:災害地質研究部会長・災害調査団 副団長 稲垣秀輝(株式会社環境地質)
パネルディスカッションでは,特別講演者の八木氏,話題提供者の加藤氏,西山氏,品川氏,伊東氏,高見氏,松澤氏をパネリストとして迎え,シンポジウムの講演内容の質疑応答や,頻発する自然災害に応用地質学がどのように答えていくか,以下の2つ課題について議論された.
課題1.広域の地形地質の違いによってどのように対策をしていく必要があるか.
・地形図が読めない住民に対して,わかりやすく伝えるのはどうしたらよいかが課題.災害が起こりやすい地形,今回は起こらなかったが,過去に起こった地形が残っているところなど,災害ポテンシャル・リスクを考慮すべき.
・災害が起きることを住民に知らせることから始めることしかない.やはり,バックグラウンドとしての地学教育が重要である.
・災害の特性を比較すると,崩壊は一度崩れた場所は崩れ残った別の場所が次に崩壊するが,土石流は何度も同じ所に出てくる.
・崩壊の類型化が必要である.同じような地質の場所では同様の災害が起こる可能性があることが,あまり周知されていないような状況ではないか?
課題2.応用地質学会の弱い部分であるソフト対策について
・国土地理院が,新しい地図記号として自然災害伝承碑のマークを作成した.このような災害石碑の重要性を強調し,どのように防災につなげていくかが課題である.
・自然災害軽減アドバイザーが各自治体にいるべきではないか?
・災害調査の学会間コラボレーションのメリットを利用すべきであるが,情報共有は進んでいるかが課題.
・防災教育について,関心のない市民にいかに災害地質の専門用語をわかりやすく伝えるにはどうしたら良いものか?最近,一般の方々はスカイラインやランドマークに関心がない.斜め写真を撮影するときには必ず空とスカイラインを入れて,説得力のある写真になるように心がけたい.
(文責:事業企画委員会 岡村明日香,田中姿郎,橋本智雄,宮原智哉)