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会長からのご挨拶

一般社団法人 日本応用地質学会会長

コ永朋祥

2024年6月21日の定時社員総会を経て代表理事(会長)を拝命 いたしましたコ永朋祥と申します。長田昌彦前会長をはじめ,諸先輩方が牽引されてきた日本応用地質学会の活動を継続し,さらに発展させるため,同日に承認されました理事と力を合わせて学会運営を務める所存です。ご協力どうぞよろしくお願い申し上げます。

私たちは,地質学・地形学・地球物理学・地球化学・物理探査学・リモートセンシング学・地下水学・地盤工学等,様々な基盤学術を幅広く活用しながら,社会が抱える現代的な課題に対処することを実践してきており,これらの 実践的活動とそれを支える学術の構築をもって,「応用地質学」と位置付けてきたという意識があります。そのような観点からは,いわゆる「問題・課題解決型」のアプローチを重視してきたように思われます。社会から求められる問題・課題に対処することの重要性は極めて大きく,また,私たちが対象とする分野は,人類社会が高度に活用する地表や地下の領域・環境をフィールドとすることから,社会からの期待も大きいものと自負するところでもあります。一方,21世紀中盤を迎えようとする現在,私たちは,「問題・課題解決型」に加え,将来の社会をデザインするという視点からの活動や社会への発信も重要になってくるものと考えています。例えば,都市デザインにあたり,地下環境を含め,都市が位置する場をよく理解し,地域の地盤特性を高度に利用する都市設計や,想定されうる災害への対処を織り込んだ形で街づくりを進めていくためには,私たちが持つ専門性が不可欠であり,そのような実力を持つ技術者集団がいることを社会の中でよく理解していただくことが重要だと考えます。同様の議論は,今後人口が減少する日本における国土計画にも当てはまるものであり,応用地質学分野からの発信が社会の中で適切に受け入れられるための努力を私たちは行う必要があると思います。

応用地質学は,前述のように,多くの学術・技術分野を俯瞰し,個々の分野の特性を適切に理解したうえでそれらを組み合わせ,さらには自らの専門性とも統合することで,これまでにない価値を生み出すことができうる分野だと考えます。また,私たちには,人間社会と自然環境の両者を包含したいわゆる人間−自然系 のシステムとしての挙動を対象とすることが求められます。これは,私たちの分野が幅広い技術分野の間を取り持つという立場であるとともに,社会と科学・技術の間を取り持つ分野でもあるということを言っているものであり,そのような観点からの活動への意識を高く持つことも求められるものと考えます。

私たちは,自然の観察を通した場の理解を基礎として科学・技術の展開を図ってきたという歴史を持ちます。優れた観察能力と適切な記載を通してデータとして取りまとめるという特有の技術から生成された情報をどのように現在の情報化された社会に提供・提示していくかも,多くの分野との協働を求められるこれからの時代には不可欠な論点だと考えます。これは,私たちの分野が,その特性を持った形でデジタル化を進め,デジタル化がなされる中での技術展開と社会への情報提供を通した変革を進める主体になれるということを示唆しているのかもしれません。ベテランといわれる立場の技術者と先鋭的なデジタル技術を活用する次世代とのかかわりが新しい形で生まれてくることにも期待があります。

21世紀の社会において必要とされる基盤的技術を持つ分野としての応用地質学と,次の世代に向けた夢を語れる応用地質学を会員の皆様と一緒に考えていければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。