日本応用地質学会

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はじめに

このページではCD-ROM「写真で見る応用地質」から写真を抜粋して紹介しています。
このCD-ROMは、応用地質に関する重要な事例写真を集めたものです。

「写真で見る応用地質」 著作・編集 : 日本応用地質学会, 制作・発行 : (社)全国地質調査業協会連合会
本CD-ROMは応用地質学会には在庫がありません。(2020年7月)

地形

写真:1-5
事 象 海岸浸食
場 所 千葉県屏風ヶ浦
地 質 第三紀鮮新世〜第四紀更新世、飯岡層
解 説
房総半島東端の犬吠岬から西へ、延々10kmにわたって、高さ40〜50mの海食崖が続き、その景観から東洋のドーバーと例えられている。太平洋の荒波に洗われて、年々0.5〜1m後退し、現在も海食崖上部台地の農耕地が少しずつ失われている。歴史的に知られている範囲においても数kmに及ぶ海食の結果、台地上にあった古い神社や城郭が海に没した。写真にみられる海食崖の下半分は、鮮新世〜更新世の泥岩からなり、上半分には更新世の砂礫層と関東ロームが載る。T. Sunamura (1973)によれば、海食崖基部の泥岩は10〜25kgf/cm2ほどの一軸圧縮強度をもつが、波力と海砂の摩耗作用により波打ち際より浸食が進むとされている。テトラポッドや防波堤が基部に設置されて浸食に対抗しているところもあるが、急崖下の地形であることと波浪の影響のため対策工事自体が困難な場所も多い。

写真:1-82
事 象 岩盤クリープ(4)
場 所 スイス
地 質 地質時代不詳、泥質堆積岩
解 説
スイス国フルカ峠のクリープ地形。地質はアルプス造山運動により生じた褶曲山地で、この露頭は泥質堆積岩である。クリープ現象は、地表の風化部が重力の作用によって、斜面下部方向に匍匐する現象で、崩壊を伴わない。そのため、急傾斜の地層が斜面下部方向に傾くため、地層の傾斜が見かけ上緩く見える。この露頭(高さ約10m)もほぼ鉛直な地層が地表から数mまで折れて30゜〜45゜に緩やかになっている。そのため、写真右側から見ると緩傾斜の地層に見える。

岩石

写真:1-32
事 象 花崗岩(1)
場 所 佐賀県富士町
地 質 白亜紀佐賀花崗岩
解 説
ダムサイトにみられた花崗岩を示すが、大規模なシーティングが存在し、開口し水みちとなっている。当初、シーティング沿いに風化が進み完全にマサ化した後に、そのマサが地下水によって洗い流され開口したものと考えられる。この写真に示すような大規模なシーティングがダム基礎に存在すると、強度、遮水の両面から対応が不可能であるため、詳細な調査を行って、大規模なシーティングが存在しない場所にダム軸を変更した。花崗岩にはこのような大規模なシーティングが存在する場合があり、建設工事に際しては充分注意する必要がある。

構造

写真:1-60
事 象 破砕帯(1)
場 所 富山県大山町真川林道
地 質 跡津川断層、飛騨花崗岩、真川湖成層
解 説
常願寺川水系真川の砂防ダム建設時に出現した跡津川断層の断層露頭を示す。中央部の主断層面を境として右側が第四紀後期のシルト層、砂礫層からなる真川湖成層、左側が破砕された飛騨花崗岩である。断層面の走向傾斜はN74E/86SEでほぼ鉛直に傾斜している。主断層面を挟んで砂礫層側は数cm破砕されている。花崗岩側は幅5〜8cmの断層ガウジからなる細粒粘土化帯となっており、もっとも新しい断層ガウジがすべての構造を切って分布している。花崗岩側はさらに約10m間が著しく破砕されており、断層角礫からなる角礫化帯となっている。断層の活動時期については、湖成層の14C年代測定、断層ガウジのESR 年代測定、TL年代測定等が実施されているがまだ見解の一致をみていない。当箇所における変位量は約50m と見積られる。顕著な条線は認められないが水平変位も予想される。

岩盤の劣化

写真:1-95
事 象 マサ化(3)
場 所 福岡県大野城市
地 質 白亜紀嘉穂型黒雲母花崗岩
解 説
マサの切土法面の浸食状況を示す。現場はダム建設現場の道路法面であるが、上部0.5〜1mは盛土で、その下部は花崗岩が強風化したマサからなる。マサは完全に土砂化しており、バックホウだけで掘削でき、掘削直後は平坦な法面で仕上がっていた。ところが、上部盛土に浸透した雨水が地山との境から法面に湧出し、その下部のマサ表面を流れたため浸食され、写真のような状況になった。このまま放置すればさらに規模の大きい崩壊につながると考えられる。このようにマサは水による浸食に対して極めて弱く、これを防ぐためには早期に植生やモルタル吹付けなどの法面保護工を施したり、湧水処理をするなど法面を水が流下しないようにすることが必要である。マサと同様、浸食に弱い地質として新第三系の砂質岩や洪積世の砂礫層がある。