日本応用地質学会東北支部 JSEG TOHOKU
 

 令和元年7月19日(金)
令和元年度 日本応用地質学会東北支部
第26回研究発表会  当日の様子
 去る7月19日(金)に第26回支部研究発表会が終了いたしました。5月の支部総会から始まり、6月の現地研修会、そして今回の7月の支部研究発表会と3か月連続の支部行事を無事乗り越えることができました。
 研究発表会はせんだいメディアテーク7F スタジオシアターにてAM10:00から定刻通り開会いたしました。当日の簡単レポート以下にまとめました。
 
開会の挨拶(遠田支部長) 

受付の様子
1.午前の部1(座長:三和幹事、副座長:細野幹事) 参加者:48名
 午前の部1は3編の発表がありました。1編目は地すべりの移動特性開析に関する研究で、地すべりの移動方向について3次元で解析した事例の紹介、そして2編目は、七ツ森カルデラを給源とする火山灰に関する考察でした。3編目は、大谷石の採掘跡地にたまっている貯留水に関する研究で、夏でも10度未満を示す低温貯留水の供給源や、低温化のプロセスの実証実験等に関する発表ででした。貯留水の供給源など不明な点もあるものの、今後の研究や開発(持続的利用方法)など興味深い発表でした。
   
2.午前の部2(座長:小林幹事、副座長:三和幹事) 参加者:48名  
 午前の部1は、3編の発表がありました。1編目は地すべりの移動特性開析に関する研究で、地すべりの移動方向について3次元で解析した事例の紹介、そして2編目は、七ツ森カルデラを給源とする火山灰に関する考察でした。3編目は、大谷石の採掘跡地にたまっている貯留水に関する研究で、夏でも10度未満の低温貯留水の供給源や、低温化のプロセスの実証実験等に関する発表であり特に興味深い研究内容でした。 午前の部2も3編の発表がありました。1編目は午前の部1の大谷石採掘跡地の貯留水に関する研究の続きで、こちらの発表では貯留水の冷却化について数値解析による検討を行い、最終的には「冷熱資源」としての利活用すべく研究を進めているものでした。一般的な地下水より低い状態の貯留水の存在、そしてそのプロセス、最終的にはその利用について今後の研究成果が楽しみな発表だったと思います。2編目および3編目は、若手枠ということで、学生時代の研究に関する発表でした。1つは、男鹿半島における脇本層の堆積環境に関する研究(石灰質ナンノ化石層序)、そして2つ目は、白亜紀の微化石の炭素・酸素同位体などから古海洋を推察する研究でした。比較的ローカルな地質からグローバルな古環境復元の研究と現在の地学系大学での研究の一端を知る良い機会となりました。
 
3.特別講演 (参加者:58名)
 特別講演は東北大学災害科学国際研究所国土地理院東北測所長の今村文彦氏を迎え、「最近の津波災害の特徴」というタイトルで講演していただきました。今村氏は、津波研究の第一人者であり、津波そのものの研究だけでなく、防災に関する啓発・教育活動にも取り組んでおられます。
今回の講演では、3.11の津波災害と世界の津波災害事例(インドネシアの津波災害)を紹介しつつ、津波災害について特徴や問題点などを説明されました。
 3.11津波災害については、地震そのものの災害に加え津波災害および原発事故など複合的に発生した過去に経験のない大災害であったことを再認識させられました。そして情報伝達の難しさ、そして2次災害などについても触れられました。
 インドネシアの津波災害については、海底地すべりであったり山体崩壊による非地震性の津波についての紹介でした。それに関連して、地震や温暖化などの影響により海洋底の堆積物中のメタンハイドレートが気化することによる海底地すべりが発生しそれによる津波の発生の可能性も指摘されていました。
 今回の講演は、津波雑賀に関して網羅的に開設され、非常にわかりやすい内容でした。3.11以降にもかない多くの地震災害・津波災害が発生していることを改めて知らされました。地震動そのものによらない津波災害についての防災上の対応は難しい課題である感じました。

4.午後の部 (座長:高見顧問、副座長:橋本幹事) 参加者:55名
 午後の部は4編の発表がありました。1つ目は、平成30年胆振東部地震で発生した岩盤すべりに関する考察で、送電線の状態変化ログや地震計のトリガー時刻から岩盤すべりの移動速度を推定する試みとボーリング結果の考察でした。2つ目は、地表地震断層の崖の経時変化に関するもので、断層崖ができた後の経過観察の結果についての考察で、断層トレンチ調査の一助となる研究内容でした。3つ目は、断層運動の隆起・沈降の地殻変動を推定する指標としての河床の縦断形状の変動解析が重要であることから、河川形状変化に注目し、河床勾配や集水面積による河川の浸食されやすさなどを考察していました。断層の解析だけでなく、ダムなどの堆砂量の検討などにも利用できそうかなと思いました。最後は、熊本地震による断層背後に認められた地表亀裂のトレンチ調査の結果についての発表でした。


5.総合討論
 すべての発表の終了後には総合討論として、本日の発表内容で質問しそびれたことや、意見を出し合ったりして討論を深めました。
 また、最後は新田副支部長の閉会の挨拶で終了いたしました。
6.意見交換会
 研究発表会終了後は、場所をスマイルホテル内のシュルブール仙台店に移動し意見交換会を行いました(参加者26名)。研究発表会で聞けなかった質問や、それにかかわる議論など交流を深めました。また、若手枠で発表された方々も多く参加され、様々な話題にあふれる意見交換会となりました。今回の研究発表は皆さんの興味をそそられるような発表が多くあり概ね好評であったと思います。ただし、より現場に根差した事例紹介などの発表などがあるとより幅の広い会になるのではないかという意見もありました。最後には村上幹事による「伊達の一本締め」で会を締めました。

        
 

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