応用地質Q&A中国四国版

応用地質Q&A中国四国版

土木地質

土-1 活断層とそうでない断層

地元の方に「ここに断層がある」と話すと、まるでここで地震が起こるかのように思われ、困ったことがあります。活断層とそうでない断層は、何が違うのですか。

断層は、異なる 2 つの岩の境界面がずれ動いて破壊された状態のことを言います。
一方で、活断層は断層の中でも近い将来に動く可能性があるもののことを言います。

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土-2 地形的根拠が見出されない断層破砕帯

リニアメントなどの地形的根拠が見出されない場所に、大規模な断層破砕帯が出現しました。
なぜ事前に予見できなかったのですか?

断層の中でも、傾斜角度がゆるい低角度断層(衝上断層)は地形に現われず、その出現が想定しにくいことがあります。
この衝上断層は上盤側で大規模な破砕帯を作ることがあります。地形だけではこうした破砕帯を予見できない場合があるため、
トンネルや長大切土、ダムサイトなどの建設時には①地表地質踏査、②弾性波探査、③ボーリング調査等により地下性状の調査を行います。

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土-3 低角度断層と弾性波探査

低角度の断層破砕帯は弾性波探査で検出しにくいと聞きますが、探査時にどのような注意が必要でしょうか?

土木分野で一般に「弾性波探査」と言われているものは、屈折法地震探査のことで、起振を地表発破による方法が一般的に行われています。
弾性波探査の測線内に低角度の断層が交差し通っている場合、通常の地表発破のみの探査では、断層に相当する低速度帯を検出できないことが多く、
探査測線の配置検討や測線内にボーリング調査孔を設け、孔内起振や受信を行うなどの工夫が必要です。

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土-4 断層の複合面構造と変位方向

断層が動いた方向を知りたいのですが、見た目には地層のズレはわかりません。どうすればわかりますか?

断層がせん断破壊される際に複合面構造というものが形成されます。この複合面構造を読み取ることで、断層のせん断センスを推定することができ、
施工上重要になる地層(支持層・弱層など)の分布の推定などに利用できます。

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土-5 熱水変質の産状と土木地質上の問題点

地質調査の報告書で「岩盤が熱水変質を受けて軟質化」などの記述を見ます。
熱水変質作用は風化作用と何が違うのですか?またどんな問題が起こるのでしょうか。

熱水変質作用も風化作用も定義がありますが、極端に言えば、熱水変質作用は「地下深くから上がってきた熱水が岩石と化学反応し、劣化すること」を指し、風化作用は「地表から浸透した酸素を含む水が岩石と化学反応し、劣化すること」と思えば土木地質上は分かりやすいと思います。
熱水変質作用を受けた岩盤は地中深くでも軟質であったり亀裂沿いが劣化していたりするので、地すべりや斜面崩壊など土木地質上の問題を起こすことがあります。

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土-6 盤膨れの発生要因

トンネルや切土地盤で盤膨れ問題を聞きますが、どのような地盤でおきるのでしょうか?

膨張性粘土鉱物であるスメクタイトを含有する地盤や、第三紀層の泥岩等に注意する必要があります。
スメクタイトを含有する地盤としては、大きな断層の近くや火山岩周辺の熱水変質を受けている地盤でその例が多いです。

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土-7 石灰岩中の空洞

ボーリングで石灰岩中に空洞がありましたが、空洞はどうしてできるのですか?

酸性水と石灰岩を構成する方解石が、長期に渡る化学反応を起こすことにより溶食されて空洞が作られます。

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土-8 沖積層と洪積層の判別方法とその意義

沖積層と洪積層はどのように区分すればいいでしょうか?

■沖積層、洪積層の定義(地層が堆積した年代を中心に)
沖積層(ちゅうせきそう)とは、普通、最終氷期以降 (約 18,000年前より後) に堆積した新しい地層を指します。一方、最終氷期以前に堆積した地層は洪積層(こうせきそう)といいます。地質学で決められている地質年代では「沖積層・洪積層」とも新生代第四紀(258 万年前から現在まで)に堆積した地層です。第四紀はさらに更新世(こうしんせい)と完新世(かんしんせい)に細区分され、更新世は 258 万年前~約 1 万 2000 年前を、完新世は約 1 万 2000 年前から現在までをいいます。地質年代的には、「沖積層」は更新世末期(約 18,000 年)から完新世(現在)までに堆積した地層を、「洪積層」は更新世の始まりから更新世末期までに堆積した地層を指します。

■両者の区分方法について
沖積層か洪積層かを区分するには、該当する地層が堆積した年代を、挟在する広域火山灰や木片等を利用して決定する必要があります。しかしながら実務でこのような方法を用いることは困難です。地盤調査(コア判定)では、肉眼観察などを主体に以下の方法によることが多いようです。①両地層の堆積年代の差から未固結で軟弱な土、含水多い「沖積層」、固結が進行した土、含水低い「洪積層」というように、土の固結度に差異があり、これに N 値の大小を加味して判定する方法と、②堆積後の古環境から、色調(土の色合い)に違いが認められ、沖積層(暗灰~灰)、洪積層(青灰~緑灰、帯褐)という色調差を用いる方法があり、これらの方法を総合して沖積層と洪積層の区分をしているのが現状のように思います。

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土-9 岩脈の産状と土木地質上の問題点

一般に岩脈とよばれる地層がどのようなものかピンときません。
そもそもどんなもので、土木的な問題があるのですか?

岩脈は、現地を構成する岩石とは別の岩石が、後から入り込んだものです。
岩脈のほとんどは火成岩で、脈状に分布します。岩脈は「貫入岩(かんにゅうがん)」とも呼ばれます。岩脈は分布が不規則でその存在や拡がりが想定しにくく、周辺と風化や割れ目発達が異なることから、調査時に想定できなかったことが施工時に判明し、土木上の問題を招くことがあります。

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土-10 酸性凝灰岩の性質と土木地質上の問題点

酸性凝灰岩とはどのような岩石を指すのですか?そもそもどんなもので、土木的な問題が想定されるのですか?

凝灰岩は堆積岩の一種で、火山から噴出した礫や火山灰が堆積し、固化した岩石です。
また「酸性」とは、一般的な酸・アルカリのことではなく、シリカ(SiO2)含有量が約 66%より多い岩石のことを指します。酸性凝灰岩は中国地方に広く分布しますが、熱水変質作用や火山陥没による劣化を受けていることが多く、トンネル工事などで問題となることがあります

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土-11 切土における土軟硬と岩級区分

切土工事を行うとき、掘削は「軟岩」などの土軟硬区分で区分されますが、地質調査時点では「CL級」などの岩級区分で区分されています。これはどう対比すればいいのですか?

土軟硬区分は施工性を前提に分けられたもので、『爆破によらなければ掘削できないようなものを硬岩、リッパによって掘削できるようなものを軟岩、ブルドーザーで直接掘削できるようなものを土砂』とされています。土軟硬区分は施工性、つまり積算を中心に考えられている一方、岩級区分は岩盤状態を区分するための指標で、考え方が異なります。
岩級区分と土軟硬区分を明確に結び付ける基準・資料はあまりなく、明確にされていません。これは、多種多様な地質が分布する日本で統一的かつ明確な基準を定めると、却って不都合を生じるからと思われます。見方の違う二つの基準の関係が曖昧であるため、各現場で岩級区分と土軟硬の関係を見定め、積算しているのが実態だと思われます。

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土-12 ボーリング掘り止めの決め方

ボーリングの掘り止めは、どのように決めたらいいのでしょうか?

調査目的によって様々です。例えば、建築など支持地盤調査の場合は、十分な強度(粘土は N 値 20 以上、砂質土は N 値 30 以上)を有する地盤を 3~5m程度確認することとなっています。

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土-13 X線回折と岩石薄片観察の適用範囲

X線分析による鉱物構成と岩石薄片観察による鉱物構成とが違うのはなぜですか?

X線分析と偏光顕微鏡による薄片観察とでは分析対象としている鉱物のサイズが異なります。
粘土鉱物などの微細鉱物を調べるにはX線回析が向き、岩石名を決めるときには偏光顕微鏡観察が向いています。

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土-14 モールの応力円とクーロンの強度式による破壊基準

モールの応力円、クーロンの強度式、モール・クーロンの破壊基準は何を示しているのでしょうか

モールの応力円は、ある三次元の物体内部の任意の面に作用する垂直応力とせん断応力の関係を方程式で表したときに、得られる円の方程式の円を言います。クーロンの強度式は、ある三次元の物体内部の任意面の破壊時に作用する垂直応力とせん断応力の関係を方程式で表したときに、得られる直線式の直線を言います。
モール・クーロンの破壊基準は、縦軸にせん断応力、横軸に垂直応力を取り、そのグラフ上にモールの応力円とクーロンの強度式を描きます。その両者の接点における座標(せん断応力と垂直応力)がその物質の破壊時の応力を表します。

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土-15 空洞調査の手法と適用限界

道路面下の空洞を見つけるには、どのような調査方法が最も適しているでしょうか。
また、深度についてはどの程度まで分かるのですか?

深さ 2m 程度までの空洞については、「地中レーダー探査」が適しており、広く用いられています。ただし 4m 程度より深いところにある空洞となると、簡単には見つけられません。見つけたい空洞の深度が 4m 程度を超える可能性がある場合は、複数の物理探査を組み合わせたり、ボーリングなどの直接的な調査を併用したりすることをお勧めします。

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土-16 花崗岩のコアストーンによる土木的な注意点

花崗岩のコアストーンとは何ですか?また、コアストーンによる土木的な注意点を教えてください。

日本の花崗岩は、亀裂沿いに風化していき、未風化部と風化部が混在する形になることが多く、その未風化部のことをコアストーンといいます。強風化した表層付近の花崗岩層にコアストーンの未風化岩塊が存在するなど、不均質な風化形態を示すことがあるため、設計・施工で注意が必要となることがあります。

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土-17 付加体堆積物の成因と土木地質上の問題点

付加体堆積物とはどのような地質ですか?ここでは、どのような土木的問題が想定されるのですか?

海溝や舟状海盆(トラフともいう)において海洋プレートが沈み込むときに、海洋底にたまっていた堆積物がはぎ取られて陸側に押しつけられます。この作用を付加作用といい、その結果、陸側斜面先端部に付け加えられた多くの逆断層で積み重なった楔(プリズム)状の断面をもつ堆積体を付加体といいます。付加体に特徴的であるメランジュは、異地性・現地性の数 cm から数 km に達する様々な大きさ・種類の岩塊が剪断された細粒の泥質岩などの基質中に含まれているものです。メランジュのような付加体特有の岩体は地層としての連続性に乏しいことから土木的にも問題がある場合が多く、特にトンネルや切土工事など応力や荷重を除去するような場合において問題となることがあります。

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土-18 メランジュとオリストストロームの違い

地質調査の報告書の中で、しばしば「メランジュ(またはメランジ等)」という言葉が出てきます。これはどのようなものですか?
また、同じような意味でオリストストロームという言葉がありますが、それとの違いは何ですか?

メランジュは、「縮尺 1:24,000 かそれより小スケールの地図上で描ける大きさで、地層としての連続性がなく、細粒の破断した基質の中にいろいろな大きさや種類からなる礫・岩塊を含むような構造をもった地質体」として地学事典 1)で示されています。
したがって、硬軟の岩石が不規則に混合しており、岩盤としての割れ目も細かく発達していることから、土木地質としては切土のり面等の土工事やトンネル工事においては、不良な地質として認識されていることが多いです。オリストストロームとは巨大な海底地すべりで生じた、大小様々の岩石が泥質基質に含まれた地質体のことです。これは堆積作用で形成された堆積性メランジュと同義とされることもあります。

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土-19 N値50=軟岩?

ボーリングのコア判定で、N 値がどのぐらいなら軟岩と判定していいでしょうか?

ボーリング調査時のコアの工種区分では、未固結堆積層でなく、N値が概ね 50 以上の軟質な岩から CL 級の岩を軟岩と評価することが一般的です。
ただし、調査の目的や地質により異なる場合もあるため、このような場合には受発注者で協議が必要です。

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土-20 クサリ礫とは

段丘堆積物を構成する礫が風化してできる「クサリ礫」とはどのようなものですか?

段丘堆積物のうち、離水(形成)年代が数10万年経過したものは、構成する礫が、ねじり鎌で容易に削れるほど軟質化していることがあり、これを「クサリ礫」と呼びます。最終間氷期以前の古い段丘群などでしばしば見られます。岩石の長期的な風化作用の産物ですが、これを利用することで、段丘面の対比などに応用できます。

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土-21 歴史時代以前の地すべり発生年代

古文書記録のある歴史時代(6世紀)以前に生じた地すべりの発生年代を推定するには、どのような方法がありますか。

地すべり移動体に取り込まれた木片などを用いた14C 年代測定や、地すべり移動体を覆うテフラ(火山灰や軽石など)の対比を行って地すべりの発生年代を推定する方法があります。また、地すべりは発生後、しだいに移動体に谷が刻まれて開析されていくため、移動体の地形的な開析程度から年代を推定する方法もあります。

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土-23 「スメクタイト」と「モンモリロナイト」

膨潤性粘土鉱物として、スメクタイトやモンモリロナイトの言葉を聞きますが、どのように違いますか。また、どのように調べますか。

膨潤性の粘土鉱物として、古くはモンモリロナイトの用語が使われていましたが、最近ではモンモリロナイトを含む鉱物の族名であるスメクタイトという名前を使うことが一般的です。スメクタイト族の代表鉱物がモンモリロナイトです。
スメクタイトは一般的にX線回折(分析)でその有無を調べます。

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土-24 石灰岩地域の地下水

石灰岩地域では、その流域の地下水の状況把握が難しいと聞きますが、どのような特徴があり、どのような調査が望ましいのでしょうか?

・石灰岩には、微生物活動により二酸化炭素能濃度が高くなった土壌中を降水が通過し、二酸化炭素を多く含む地下水により溶解が促進されやすい特徴があります。
・石灰岩地域の地下水の水質は、石灰岩の主成分である炭酸カルシウム(CaCO3)を反映して、Ca2+とHCO3-の成分が多い炭酸水素カルシウム型(Ca-HCO3 型)となり、pH8 以上のアルカリ性を示します。
・石灰岩が広く分布する地域の地下水は、地下に分布する溶食空洞が地下河川のような水みちを形成し、地形がつくる集水域を超えた地下水流動があることが大きな特徴です。
・石灰岩地域の渓流では流水がなく、下流の湧出箇所では多くの湧水量となる傾向があります。その湧水量は河川水の流量変動に類似しており降雨に連動して変化する傾向があります。
・トンネル施工時には、石灰岩地帯中の無数の縦方向や横方向に発達した空洞(鍾乳洞)のつながりにより、土被り圧に近いような高水圧の湧水を伴うことがあります。
・集水域を超えた地下水流動があるため、トンネル施工の影響範囲や湧水量を推定することは、一般的に用いられている地形的な要素にもとづく水文学的方法(高橋の方法)やポテンシャル理論に基づく水収支シミュレーションなどの手法では難しい。
・石灰岩地域のトンネル水文調査の着目点で言えば、石灰岩分布の確認、広域の水文地質調査、地質構造の把握、湧水地点の水収支の検討から地形に現れない集水域の検討とトンネルルートとの関係把握、水質分析による検討、特に広域の石灰岩分布と湧水地点の連続性の把握等が重要項目となります。
・また、石灰岩の空洞(鍾乳洞など)を伴う水みち調査では、特殊なトレーサーとなりますが、アクチバブルトレーサーなどを用いれば1~2km 離れた地点でも追跡が可能であり、地中の水みちが完全には把握できなくても、トンネルの地下水評価上有益なデータとなります。

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土-25 建物基礎の杭の長さ

建築基礎の杭の長さが足らなくて建物が傾くことが話題になったことがありましたが、事前に防ぐ手だてはありますか?

マンション傾動問題では、基礎杭が支持層まで達していないことや、施工データの改ざんが問題となりました。施工データの改ざんは、建設業の階層構造での責任と連携の問題であり、現在様々な取り組みで改善が図られています。一方、基礎杭が支持層まで到達していなかった問題は、支持層の不陸への対応不足が主な原因と考えられます。
建物が傾く原因は、構造物をささえる支持層に支持杭が到達していない場合や、支持層厚が不足して下位の地層が沈下してしまう、あるいは、支持層上位の緩い粘性土層で圧密沈下が発生し負の摩擦力が杭に働く、等が考えられます。 これらの原因の中で最も多いのが、支持杭が支持層に到達していない場合と考えられます。地中に分布する支持層はその形成要因により凹凸や傾斜していることがあり、地質調査が不足していると支持層の3次元分布の確度が高まらず、支持杭が支持層に到達しないことが生じます。
建物が傾くことを事前に防ぐには、適切な支持層を決定し、その3次元分布を精度よく把握する必要があります。

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土-26 玉石と転石

ボーリング柱状図で玉石と転石の記載があったのですが、玉石と転石は、どこまでの大きさのものが玉石で、どこからの大きさのものが転石なのですか?

玉石と転石の大きさの定義は実はありません。
ですがNEXCO の土質調査要領や全国地質調査業協会連合会のボーリング野帳記入マニュアル、地盤工学会の地盤材料の工学的分類などを参考にすると、

玉石・・・径75mm~300mm もしくは径75mm~500mm
転石・・・径300mm 以上 もしくは径500mm 以上

のどちらかでの判断となりそうです。しかしながら定義はされておらず、技術者の判断により分類しているというのが実情です。

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防災地質

防-1 地すべりを律する地質構造

地すべり調査の基準書では、地質構造を調べるようにとありますが、層理以外に注意する地質構造がありますか?

地すべりと地質構造との観点で見ると、以下のような地質構造に起因する地すべりの事例が多く見られます。
① 流れ目の層理、片理に沿う、②卓越する流れ目の節理に沿う、③流れ目の断層に沿う、④卓越する流れ目の劈開面に沿う、⑤褶曲軸の落としの方向が流れ目となっている、⑥巨大オリストリスの塊状岩塊が流れ目をなす、⑦流れ目の変質帯に沿う、⑧鉛直に近い層状岩盤のトップリングによる、⑨背後に安山岩の地下水貯留槽をもつ第三紀層すべり。
①~⑦に共通していることは連続する弱層が流れ目(盤)をなしていることです。
この他、⑧のトップリングによる地すべりの発生事例もあり、地質構造が概ね鉛直に近く、地形的には半島状に伸びる尾根を横断するように開削した時に発生することが多いようで、地形効果が認められます。⑨では水理地質構造と関連しています。

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防-2 花崗岩に発達する粘土細脈

花崗岩には粘土細脈があり、それががけ崩れの原因になることがあると聞きました。
具体的にはどのような現象なのでしょうか?

粘土細脈は花崗岩の成因に関わってくるもので、熱水変質によりできたものと考えられています。
これが地質的な弱面となり、斜面崩壊に至った事例が多くみられます。

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防-3 斜面変動における地形判読の意義

地すべりや斜面崩壊地形を地形図や空中写真から判読することが多いですが、具体的にどのようなことを行っているのですか?

地形図や空中写真を使用した「地形判読」という作業から、地形の種類(地形種)を読み解きます。そうすることで、その地形の成り立ちや地盤の特性が推定できます。地すべりや崩壊地形により形成された地形を抽出することで、これらの災害箇所の位置や規模、範囲などを予見しています。

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防-4 地すべり面の確かめ方

地すべり調査では、すべり面を確定させることが重要なのは理解できますが、それをどうやればわかるのか、今一つわかりません。
説明してください。

地すべり調査ですべり面を確定させるためには、ボーリング調査の結果とパイプ歪計や孔内傾斜計等による地中変位の計測結果を用いた総合的な判断が必要です。

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防-5 地すべり・崩壊・土石流の違い

地すべりと崩壊(崩落)、土石流の違いが今一つ分かりません。
その違いと、対策工について教えてください。

「地すべり」「崩落(崩落)」「土石流」これらはいずれも土砂や岩石が集団で移動する現象で、移動速度や規模、運動様式により分類がなされています。一般的には、移動速度が遅く、断続的に斜面が移動する現象を「地すべり」、移動速度が速く、斜面が崩れ落ちる現象を「崩壊(崩落)」、移動速度が速く、水と土や石、砂が混じり合って流下する現象を「土石流」といいます。これらに対する一般的な対策工にについて紹介します。

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防- 8 言い伝えに残る災害

言い伝えの中に災害の話が残されていると聞きますが、何か具体的なことはありますか。

短い時間軸だと災害記録や防災訓練、防災マップなどが思いつきますが、長い時間軸だと「石碑」「ものがたり」に言い伝えが残っていたりします。

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防- 9 地すべりと斜面崩壊の違い

端的に言って「地すべり」と「斜面崩壊」の違いは何ですか?

両者の分類に明確な境界はありません。公共事業での取り扱いという観点からの分類であれば、基本的に「地すべり」は斜面上の土砂や岩盤が下方に移動している現象(現在進行形)を指し、「斜面崩壊」は斜面上の土砂や岩盤が下方へ移動した現象(過去形)と理解すればよいと思います。

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環境地質

環-1 水みちの実際

地下水の“水みち”とは読んで字のごとく地下水の通りみちと思うが、どのような地下水現象で、水みちがあればどのような問題が生じるのでしょうか?

地下水の水みちとは、帯水層中で相対的に空隙が大きく、連続した水の流動系を意味していますが、水みちの地下水特性、流動機構など解明されていない問題が多く残っています。水みちがあることで、地すべりや斜面崩壊の誘発、湧水・漏水の発生、塩水化の進行、汚染物質の拡散など様々な問題が起こることがあり、自然災害、地下水障害、地下水資源開発において重要なキーワードの一つになっています。

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環-2 地質起源の酸性水

最近、地質関連で「酸性水問題」という言葉を聞くようになりました。
それって、どのようなことなのでしょうか。またどんな問題があるのですか?

地層に含まれる硫黄などの成分が、掘削などにより溶け出し、周辺環境を酸性化させてしまう一連の問題を指します。重金属類の溶出もセットになることがあります。酸性水により周辺環境が改変してしまった例や、土壌汚染を招いた事例があり、このような成分を含む地層周辺では注意が必要です。

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環-3 地盤改良での六価クロム溶出

地盤改良でセメントを使用した場合、なぜ六価クロムが溶出するのですか?また、溶出しやすい土はありますか?

土に含まれる粘土鉱物や有機物によって、セメント原料に含まれる自然由来のクロムが溶出しやすくなると言われています。関東ロームなどの火山灰質粘性土をセメントで地盤改良をすると、溶出しやすくなると言われています。

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環-4 水の電気伝導度を測る意義

水文調査の際に、簡易水質の項目として電気伝導度を測定する必要があるといわれますが、電気伝導度とはどういうものですか?
電気伝導度を測ることで何が分かるのですか?

水の電気伝導度は、水溶液の電流を流す能力であり、水溶液の電気抵抗の逆数で示します。地下水中に含まれる電解質(イオン)の濃度が高くなれば電気伝導度の値は大きくなります。一般的に地下水中の電解質は地層から溶け出したイオン成分から成り立つため、地下水の流動経路等を把握するために水文調査では現地で測定可能な電気伝導度の値は基本的なデータとして得ることが可能です。電気伝導度から地下水流動状況の把握や工事に伴う影響評価といったことに利用することができます。

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環-5 取水計画での水位低下

井戸計画時に水位低下量は、どの程度に計画すればいいのですか?

不圧帯水層における計画水位は、帯水層 H の 1/3 を限界水位低下量とし、その 0.7~0.8 を適正水位低下量として水位低下量を設定すればよいと考えられます。

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環-6 地下水の塩水化

沿岸部において、井戸による地下水利用や工事による地下水排除等で地下水位が低下すると、地下水の塩水化が気になります。
塩水化を評価する簡易な方法はありませんか?

海岸付近の地下水は、密度の大きな海水が陸側の淡水の下にもぐりこんで塩水くさびを形成します。この海水と淡水の境界は塩淡境界といわれ、その深度はガイベン-ヘルツベルグの式から推定でき、塩淡境界は地下水位低下の 40 倍で上昇するといわれています。塩淡境界が井戸底や水替え深度付近に近づくと、地下水の塩水化が懸念されることから、対象地点での地下水位や塩淡境界の位置が塩水化問題を評価するポイントになります。

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環-7 蛇紋岩の性質により懸念される事象

蛇紋岩とはどんな岩石で、どのような土木的な問題が想定されるのですか?
また、蛇紋岩はアスベストを含むそうですが、人間や環境への影響はあるのでしょうか?

蛇紋岩は上部マントルを構成するかんらん岩が水の影響により変質してできた岩石で、構造運動の影響から、割れ目が発達し、破砕していることが多く、膨潤性粘土鉱物を含むこともあります。そのため地すべりや崩壊などを起こしやすく、トンネルでは地圧増大などの可能性があり、施工時には十分な注意が必要です。また、蛇紋岩は程度の差はあれアスベストを含むので、トンネル等の工事では、事前の調査と飛散防止等の対処が望まれます。膨潤性粘土を含むことも併せ、蛇紋岩地帯でトンネルを計画する場合は、難工事になることを意識すべきです。

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環-8 シカ食害と斜面崩壊

シカの食害によって土壌侵食や表層崩壊が起きやすくなると聞きますが、なぜでしょうか。

増えすぎた二ホンジカの採食による自然植生への被害が顕著な多くの場所では、裸地化と土壌侵食が進行しています。
その周囲の急斜面では表層崩壊が起きやすくなると考えられます。

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環-11 井戸調査の水質分析項目

井戸調査の水質分析項目は何を測れば良いのでしょうか?

井戸の用途に応じて項目を設定すべきものですが、濁りなどからなる「11 項目」とする事例が多いです。さらに、現地状況に併せて項目を追加・変更することもあります。

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環-12 ヘキサダイアグラム

地下水の水質や特徴を調べる際に、ヘキサダイアグラムという言葉をよく目にしますが、どのようなものですか?

地下水は、水の特性の一つである溶解性により流動に伴い様々な物質が溶けこみ、水循環系の特徴を反映した水質を示します。
ヘキサダイアグラムとは、主要な溶存成分を陽イオンと陰イオンに分けた六角形で表示する方法で、水質の特徴を形で表現し、視覚的に水質組成を評価できます。さらに水質組成をひし形・三角ダイアグラムで表示したトリリニアダイアグラムを併用することで、より明確な特徴を知ることができます。

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環-13 地下水の水源候補地選定

地下水開発を効果的に行うためには、水源候補地をどのように選定したらよいですか?

地下水は地層の間隙や亀裂などの空間に存在し、その中でも透水性の高い部分を、より多く流れています。この地下水の流れが多いところに井戸を設置すると、効率的な地下水開発が行えます。
文献調査、現地調査および物理探査などを実施して、河川沿いや旧河道などの透水性の高い礫層や断層や地すべりなどによって形成された開口亀裂の多い岩盤領域を把握し、必要規模に応じた水源候補地を選定することが有効です。また、利用目的に応じた 水質分析を実施し、確保できた地下水が利用できるか判断することも重要です。

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その他

他-1 流紋岩と花崗岩の違い

同じ地域に、流紋岩と細粒花崗岩の双方が出現します。
同じような細粒の酸性火成岩ですが、両者の違いは何ですか?

同じような酸性火成岩ですが、両者は産状が異なります。流紋岩は火山岩に分類され、地表でマグマが急速に冷え固まって出来た岩石です。
一方、花崗岩は深成岩に分類され、地下深部でマグマがゆっくりと冷え固まって出来た岩石です。花崗岩の中でも、地下において比較的速く冷却された場合、細粒な組織を示す岩石となります。

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他-2 段丘の成因と特徴

段丘とはどのようなものですか?また、段丘堆積物の分布域では、どのような土木的な問題が想定されるのですか?

段丘地形はもともと河床や海底だった所が、地殻変動等の影響を受け、離水することにより形成されます。一般に段丘堆積物は強度が強く、土木的に問題となることは少ないですが、建設工事の状況によっては斜面崩壊等の発生することがあります。とくに段丘地形が明瞭に表れていない箇所では十分な地質調査が必要です。

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他-3 K-Ah火山灰とAT火山灰

中国四国地方のボーリングコアで K-Ah 火山灰と AT 火山灰を認定・識別するにはどのような特徴を見ればいいですか?

火山灰は、主に、色調、質感、構成粒子の特徴の 3 点を調べて識別します。

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他-4 ボーリング掘進に伴う水頭変化

ボーリング掘進に伴う水頭変化は、何を意味していますか?

ボーリング掘進に伴う水位変化は、地下水の鉛直方向における流動状況を示しています。掘進中孔内水位が低下する場合、深部への流動を示し、地下水涵養域となっています。一方上昇する場合、上向きの流動を示し地表への地下水流出域となっていることを示すと考えられます。

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