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応用地質学講座 (2014〜)

【結果報告】 令和5年度(2023) 応用地質学講座
  根尾谷断層巡検

令和5年の応用地質学講座は,「根尾谷断層巡検」を開催しました.
この場をお借りしまして,参加していただいた方々,講師として一日中解説をしてくださった岐阜大学の大谷教授(中部支部支部長)に感謝申し上げます.

さて,当日はあいにくの雨でしたが,以下のスケジュールで実施することができました.

    9:00 岐阜駅前集合・出発(中型バスにて移動)
stop1 10:00 梅原(うめはら)断層と断層角盆地
stop2 10:40 断層変位地形(横ずれ谷と断層角盆地)
stop3 11:10 濃尾地震に伴う横ずれ変位とリニアメント
stop4 11:45 濃尾地震に伴う横ずれ変位と自然地形の累積変位
    12:40 うすずみ公園で昼食
stop5 14:00 濃尾地震に伴う縦ずれ変位と地震断層観察館
stop7 15:20 根尾谷断層の断層破砕帯
stop8 16:20 メランジュのチャート・砂岩境界における崩壊地
    17:20 岐阜駅到着・解散(車中より石灰鉱山を見学)

写真等で簡単に当日の様子を紹介させていただきます.

【 stop1 梅原(うめはら)断層と断層角盆地 

ここでは温見断層による地形変位と断層角盆地について説明していただきました.
下の写真で,橋の右側の道路が登り坂になっているのがお分かりでしょうか.
これが断層による高さの違いとなっています.

写真では川が流れていますが,手前側が上流側で,写真の奥が下流側となります.
ここでは,下流側が隆起(持ち上がっている)してます.
このような状況で,川から水や土砂が供給されればどうなるか?といったことを説明していただきました.

【 stop2 断層変位地形(横ずれ谷と断層角盆地) 】

本巣市の湯ノ古公園(本巣市HPより https://www.city.motosu.lg.jp/0000001779.html)を見学しました.
この公園では湧き水による池がありますが,この池の形成にも断層運動が関わっています.
ここでは,キレイな水でしか生息できない「ハリヨ」という魚が生息しており,本巣市のHPによると,ハリヨは岐阜県と佐賀県の一部にしか生息していない絶滅危惧種だそうです.

下の図の中央あたりが湯ノ古公園です.(図はGoogleMapより引用)
図の中央あたりで川が「く」の字に曲がっていますが,図中央より上では,しばらくの区間において川が直線状になってますね.


【 stop3 濃尾地震に伴う横ずれ変位とリニアメント 】

ここでは断層運動に伴う横ずれ変位を見学しました.
地面が横にずれたことがよく分かる教科書的な場所だと感じました.
図(GoogleMapより引用)の中央で道が折れ曲がっているのがお分かりでしょうか.
この曲がりは断層運動によって地面が横にずれたものです.


この横ずれは他の場所でも見られたのですが,農作業を行うためにはあぜ道が曲がっているのは不便なため,他の場所の横ずれは整備されて直線になってしまいました.
しかし,非常に貴重なものであるため市指定の天然記念物として,この場所は直線にするための整備を行わずに残されたというわけです.


近くで見るとこんな感じです.ズレが分かりやすいようにあぜ道付近に人に立っていただきました.


【 stop4 濃尾地震に伴う横ずれ変位と自然地形の累積変位 】

こちらも stop4 と同じく横ずれ断層です.
GoogleMapで見ると,図中横の白丸の中で垣根がずれているのが分かります.


近くで見るとこんな感じです.分かりやすいように地面が動いた方向を矢印にしてみました.
自分が立っている場所を基準に見たとき,向こう側(写真の奥側)が左にずれているので「左横ずれ」です.
じゃあ,「反対側に立ったら逆になるんじゃ...」と一瞬思うかもしれませんが,反対側に立って見ても同じく「左横ずれ」になります.


ここまでで午前中の見学は終わり,薄墨(うすずみ)桜で有名なうすずみ公園で昼食をとりました.

【 stop5 濃尾地震に伴う縦ずれ変位と地震断層観察館 】

さて,午前中は横ずれ変位を見てきましたが,ここ断層観察館では6mもの縦ずれ変位を観察しました.
断層観察館は,このHPのトップページに度々掲載しておりますが,根尾谷断層上に建設されたものです.
「断層を保護するために,断層の上に屋根と壁を作った」とも言えます.
下の写真からも分かるように断層観察館は道路に対して斜めに建設されています.断層面を基準に建設されたことがよく分かります.


少し違うアングルで撮影した写真を掲載します.写真の手前側と奥側が段差による高さの違いがお分かりでしょうか.この段差が,断層による縦ずれ変位です.


この断層を,観察館の中では「生」で見ることができます.↓

断層をよく観察するため地面を彫り込むことを「トレンチ」と言います.
ここではトレンチを行った場所に建物を建設して,断層を観察できるようにしてあります.

言葉で説明するより,併設されている解説図をご覧になった方が分かりやすいと思うので掲載いたします.


このほかにも様々な展示物をもとに,大谷先生から説明をいただきました.
今日は根尾谷断層系の見学なのですが,午前中は横ずれ断層ばかり見てきましたが,同じ根尾谷断層系でも午後は,いきなり6mの縦ずれを見ることになりました.
この横ずれと縦ずれの関係も分かりやすく教えていただきました.

さて,次の観察ポイントは以下の予定でしたが,露頭までの道のりが流木によって塞がれていましたので,残念ながらこのポイントはパスいたしました.
【 stop6 根尾谷断層による破砕を伴わない泥質メランジュ 】

【 stop7 15:20 根尾谷断層の断層破砕帯 】

ここでは露頭を前に大谷先生より説明いただきました.川のせせらぎにより説明が聞こえづらかったので3班に分けて説明していただきました.


最後の観察ポイントは,斜面崩壊に関するものです.

【 stop8 16:20 メランジュのチャート・砂岩境界における崩壊地 】

斜面の下から見上げるように撮影したのが下の写真です.

写真中央から右にかけて切り立った岩壁があるのですが,左側にはありません.
左側では過去の斜面崩壊が生じており,なぜここだけ崩壊したのか,それを理解するためにはどういったことに着目すれば良いのか,といった点について説明していただきました.

以上で現場での観察は終了いたしました.

当日は雨でしたので,断層観察館で記念写真を撮りました.
若手からベテランまで多くの方にご参加いただきありがとうございました.


「災害は忘れたことにやってくる」と言います.根尾谷断層についてはその痕跡を天然記念物や観察館という形で残してくださっています.それを次世代に伝え続け,次の災害に備えることは大変重要だと思います.

本講座が皆様の業務,ひいては社会の防災・減災のお役に立てば幸いです.

※断層観察館での撮影およびHP掲載は許可をいただいております.
(Y.H.)

【結果報告】 令和4年度(2022) 応用地質学講座
  土砂災害の疑問55出版記念講座(中部編)

令和4年の応用地質学講座は,「土砂災害の疑問55」出版記念講座(中部編)ということで,対面とオンラインでのハイブリッド形式で開催しました.

ちなみに,「土砂災害の疑問55」とは,日本応用地質学会の「災害地質研究部会」が編集した書籍で,「みんなが知りたいシリーズ」の17として成山堂書店さんから出版されたものです.

このような本です.
ISBN:978-4-425-98401-5







さて,当日の様子を紹介いたします.

開催日時:2022年12月9日(金) 13時〜17時
場所:名城大学天白キャンパス理工学部研究実験棟 + Zoomによるオンライン
講師:稲垣秀輝氏,松澤 真氏,永田秀尚氏,加藤弘徳氏,加藤靖郎氏,中部支部幹事
プログラム
 13:05-15:35 著者らによる土砂災害の疑問55の書籍の講演
 15:50-16:20 中部支部管内の最近の災害
 16:20-17:00 中部支部管内の災害と自然災害伝承碑

大谷支部長の挨拶で開催しました.


土砂災害の疑問55の講演 講師:加藤靖郎氏


講師:加藤弘徳氏 広島から駆けつけてくださいました.ありがとうございました!!

講師:稲垣秀輝氏


講師:松澤 真氏  書籍:土砂災害の疑問55の編集ワーキンググループ長です.


書籍の講演の次は,中部支部管内の最近の災害と題しまして 永田秀尚氏よりご講演いただきました.


最後は,中部支部の幹事で手分けして調査した 中部支部管内の災害と自然災害伝承碑 のお話しをさせていただきました.


内容が盛りだくさんでしたので,終了予定時刻を30分ほどオーバーして17:30頃の終了となりました.
みなさま,ありがとうございました.

今年度の中部支部の主な活動はこれで終了となります.
少し早いですが,みなさまよいお年をお迎えください。
(Y.H.)

【結果報告】 令和3年度(2021) 応用地質学講座
  平地・丘陵地の応用地形判読講座

 令和3年の応用地質学講座は,オンラインでの地形判読講習会を12月3日に行いましたので,その様子をご紹介いたします.
 応用地形判読講習会は過去にも実施しておりますが,人気もあり,また応用地質学には欠かせない分野という点で今年も実施いたしました.

当日のプログラムは以下です.
1部:地形判読講座をはじめるにあたり (中部支部役員:応用地形判読士)
2部:低地・河川・海岸の地形 (講師:西村智博氏 国際航業株式会社)
3部:平地周辺および丘陵地の地形 (講師:永田秀尚氏 有限会社風水土
質疑応答

当日の流れに沿って講座の様子をお知らせいたします.

1部では,中部支部の応用地形判読士資格取得者4名による地形判読のガイダンスとなるお話しでした.

地形図とはどんなもの?というお話しから...


現在では,デジタル地形ツールを利用して地形を視覚的に分かりやすく表現することができるようになった,という最新のお話しが第1部でした.



2部:低地・河川・海岸の地形では,座学によって低地の地形判読の基礎を教えて頂き,その後は少人数に分かれて地形判読実習実習を行っていただきした.
今回の講習会はZoomを使用したオンライン講習会でした.
Zoomはブレイクアウトルームという,少人数に分かれていくつかの「部屋」を設定することができます.
実習は,この機能を利用して,6つの部屋に分かれて行いました.
各部屋には「管理人」を配置し,管理人は質問があれば適時お答えする,また講師への質問を仲介する等を行うとともに,講師は各部屋を巡回して質問を受け付ける,という形で実習を進めました.

PCの画面の写真ですが,各部屋での実習の雰囲気が伝わればと思います.
PCのカメラを手元に向けることができる方には,作業中の様子を画面に映してもらっていました.

最初は河川の地形判読の座学と実習でした.



実習後は,各部屋の代表に地形判読結果を発表してもらい,講師の方のコメントを受けるということをしていただきました.



次は海岸の地形です.ここでは海岸地形を読み解くコツを教えていただきました.
ここでは,いくつかの川が海に流れ込んでいる場所を取り上げました.
山地と平地の境界は直線状になっており,海岸付近と山地の間に人が住んでいるというのが特徴的ですね.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)


地理院地図のHPで,地形図に土地条件図25000を重ねたのが下図となります.
これだけでも様々なことが分かりますね.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)

実際の判読実習状況です.


2部の最後には,地形図で判読した地形が実際はどのようになっているか,を確認するために現地の写真を見せて頂きました.
(講師の西村様.お忙しい中,わざわざ現地の写真まで撮影していただきありがとうございました.この場をお借りして御礼申し上げます)



3部:平地周辺および丘陵地の地形でも,2部と同じように座学の後に実習という流れでした.
実習では,地形図の判読に加え,地理院地図HPを利用して地形を読む手法も行いましたので,その一部をご紹介します.


まずは地形の色別標高図の作成です.
例えば,日本全体で色別標高図を作成すると下図の様になり,中部地方に高い山が集まっているのが分かります.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)

上図と同じ色彩で,富山県の黒部川扇状地を表すと下図のようになり,よく分かりません.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)

しかし,同じ位置で標高の色分けを変えるだけで下図のようになり,綺麗な扇状地が見えるようになります.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)

また,養老山脈と平地の境界の地形図では,山地から川が流れて扇状地を形成しているのが分かりますが,いくつかの扇状地が重なり合っている合成扇状地のため判読が難しいです.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)

そこで色別標高図に陰影起伏図を重ねたものを作ってみると,地形図だけよりははるかに扇状地が判読しやすくなります.
(クリックで拡大します)
ここでは扇状地のある部分に注目することにより,「どこから氾濫するか?」といったことが読み取れることも教えていただきました.(応用地質学は社会に役立つことを目指した学問ですのでこういった知識は大変重要です))

(地理院地図HPより作成)


このようなツールを使いながら,実際に地形判読を行っていただきました.
目の前に自分のパソコンがあり地理院地図が利用でき,かつ地形図もで地形判読を行い講師(熟練者)からの助言ももらえる,という状況は普段の業務にも似ている状況ではないでしょうか.
実際に集まって行う講習会であれば,PC環境,ネットワーク環境,1人あたりのスペースが確保されないと実現できない状況ですが,オンライン講習ではそれが可能となりました.


3部でも実際に段丘の地形を判読していただきました.



地理院地図HPも利用して判読を行う方もおられました.



判読実習の最後は講師の解答例を見せていただきました.


以上が,令和3年度 応用地質学講座の内容でした.
10時から17時までと長い時間でしたが,あっという間に感じましたが,受講者の方々はいかがでしたでしょうか.

コロナ禍ということもあり,次回の中部支部の行事は来年度となります.

少し早いですが,皆様,よいお年をお迎えください.
2021年12月14日 (Y.H)


【結果報告 番外編】 令和2年度(2020) 応用地質学講座(阿寺断層巡検)

令和2年応用地質学講座は,阿寺断層の巡検を2020年12月4日に行いました。
その際,講師の安江健一准教授より「地震が起きたときに池ができたという言い伝えもある」とのお話しがあり,思い出したことがありますので,ここで紹介させていただきます.

思い出したこととは,モトツーリング(2020年7月号)という雑誌に,かつて信州に伝説の池があったというものです.
これが断層(地震)に起因するものかは不明ですが,地形,神社の位置,伝承などを総合的に調べて記事にされておられます.
この記事についてモトツーリングさんに問合せたところ,快く資料の提供と掲載許可をいただきましたので掲載させていただきます.

伝説の「辰野湖」について特集記事が組まれており,応用地質学的に一番目を引いたのが以下のページです.
地形図に,断層,神社の位置,色分けされた標高が載っています.

(図はクリックで拡大します)

以下に,特集記事を掲載させていただきます.

(図はクリックで拡大します)


(図はクリックで拡大します)


(図はクリックで拡大します)


(図はクリックで拡大します)


(図はクリックで拡大します)

いかがでしたでしょうか?
今,自分たちが住んでいる場所が,過去にどのような場所だったのか?
池や湖だったのか,川だったのか,丘陵だったのか,谷だったのか,そういったことに思いをはせるのも良いかもしれません.
過去にどのような場所であったかが分かれば,さらにもう一歩踏み込んで,どのような地面(地質)かが推測できます.
地形・地質の生い立ちが分かれば,その場所で起きるであろう災害もある程度推測できます.

コロナ禍では制限がありますが,この記事のように,こういった伝説や地形を見ることなどを目的として,ツーリングやドライブ,電車の旅なども面白いと思います.
電車によって地形・地質を楽しむという行為は,(財)深田地質研究所さんが「ジオ鉄」として活動されておられますので,興味を持たれた方は アクセスしてみてください.

ジオ鉄 Web
https://www.fukadaken.or.jp/geo-tetsu/

さて,阿寺断層巡検から話があちこちに飛びましたが,これらの情報をきっかけに応用地質学に興味を持って頂ければ幸いです.
最後になりましたが,貴重な情報をご提供くださったモトツーリングさんには深く感謝申し上げます.
ありがとうございました.


【結果報告 その4.最終回】 令和2年度(2020) 応用地質学講座(阿寺断層巡検)

令和2年の応用地質学講座は,阿寺断層の巡検を行いました。
当日の様子(その4.最終回)をお知らせいたします。
(その1)(その2)(その3)はそれぞれをクリックしてください.

「その3」に引き続き,断層露頭のご紹介と断層地形のご紹介をします.
まずは断層露頭の写真です.この場所は諸事情によりHPでは場所の公開を控えさせて頂きます.
この断層露頭では,白い部分(花崗岩)と茶色い部分(礫層)が直線状の境界で接しています.
花崗岩はマグマが地下数kmで冷えて固まった石,礫層は地上で堆積したものですので,これらが隣同士になるためには,何らかのイベントが必要になりますよね.


さて,巡検の最後に見た断層地形が下の写真です.
写真中央やや下に立っている人の左右で,地面の高さが違いますね.
(露頭場所の緯度経度:北緯35°34′19.4″、 東経137°32′10.9″)
この段差は,断層によって形成されたものです.
今回の巡検報告で紹介した「その2」と同じ類のものです.



この高さの違いだけで断層と断言するのは難しいと思います.
近くに川も流れていますので段丘地形かもしれません.
ということで周辺の地形図(基盤地図情報のデータからQGISを使って作成)を掲載します.
赤い矢印のあたりが,上の写真で人が立っている場所ですが,
等高線が密になっているなどの地形的特徴はありません.


これでは断層かどうか分かりませんので,4つの広域の地形図を見てみます.
(基盤地図情報のデータからQGISを使って作成)

1.広域の地形図
2.広域の地形図に断層線を入れたもの
3.CS立体図
4.CS立体図の鳥瞰図

いずれの図もの赤点線の範囲が,上図の範囲となります.
それぞれの地形図を見比べてみて断層地形をご覧ください.
どの図もクリックすれば拡大します.









広域の地形図を見ると,断層崖などの断層の特徴を表す地形が見えてきますね.
ここでも,やはり断層調査には地形の情報が欠かせないということが分かります.

他にも安江先生に様々なご説明をいただきましたが,HPでの紹介はこれで終了とさせていただきます.
実際の巡検では,HPでお伝えできなかったことも多々有り,HPを作成しながら「百聞は一見にしかず」だなぁ,と思いました.
(HP作成者が説明下手なのはご容赦ください.)

今後も,みなさんに興味を持って参加していただけるような行事を企画していきますので,
引き続き,どうぞよろしくお願いいたします.




...巡検当日,安江先生から「地震が起きたときに池ができたという言い伝えもある」というお話しを聞きました.
それで思い出したことがありますので,またHPで紹介させていただきます.


【結果報告 その3】 令和2年度(2020) 応用地質学講座(阿寺断層巡検)

令和2年の応用地質学講座は,阿寺断層の巡検を行いました。
当日の様子(その3)をお知らせいたします。
(その1)(その2),はそれぞれをクリックしてください.

ここでは,当日に見学したうちの岐阜県中津川市「長洞」近くにある断層露頭を紹介します.
なお,この断層露頭については「道家・安江・廣内・國分・松原(2014)岐阜県中津川加子母地区長洞における阿寺断層帯中部の活動時期」に詳細が記されています.
(露頭場所の緯度経度:北緯35°44′26.3″、 東経137°20′48.3″)

いきなりですが,断層露頭の写真です.
写真の右側の白っぽい部分:濃飛流紋岩類(白亜紀〜古第三紀初頭:おおよそ7000〜5000万年前)
写真の左側の焦げ茶っぽい部分:腐植土(約5000〜1000年前)
(写真は,クリックすると拡大します)
断層は,そのズレによって時代の全く違うものを隣同士にさせます.



例えば,岐阜県と富山県の県境付近にある「横山楡原衝上断層」もその1つです.
https://geo-gifu.org/geoland/6_tennenkinenbugtu/tennen_17_yokoyamanirehara_syouzyoudansou.html

断層により,時代を異にする地層が接していたり,新しい地層の上に古い地層があることもあります.
また,断層がずれることにより地震が起きたり,断層面が力学的な弱面になるなど,人間の生活に大きな影響を与えますので,断層位置や活動時期の把握は大変重要になります.

さて,ではこの露頭の周辺地形はどうなっているか?ということで,地形図(北は左上方向))を掲載いたします.
図中の赤い矢印は,前述の「長洞」の断層露頭の位置です.
オレンジ色の矢印は,断層による沢の屈曲を示しています.
(図はクリックで拡大します)


あまり分かりやすくはなりませんでしたが,参考までに鳥瞰図(西から東を見ています)も掲載いたします.


いかがでしょうか?
断層露頭とその周辺地形の紹介でした.

【結果報告 その2】 令和2年度(2020) 応用地質学講座(阿寺断層巡検)

令和2年の応用地質学講座は,阿寺断層の巡検を行いました。
当日の様子(その2)をお知らせいたします。
(その1),はこちらをクリックしてください.

ここでは,当日に見学したうちの岐阜県中津川市「加子母の大杉」近くにある断層崖を紹介します.
(緯度経度を載せておきますので,興味のある方は検索してみてください.
北緯35°45′16.1″、 東経137°20′00.3″)

見学した場所は,下図中央の●印付近です.
ここには「等高線が密」になっている場所があり,これが断層崖になっています.


下の写真の中央に断層崖があり,これが地形図(上図)で「等高線が密」になっている箇所です.
写真左下の田んぼと写真中央付近の家が建っている場所の間に標高差があるのが分かりますね.


ここでは,安江先生が地元の小学生と一緒に作った断層の案内看板がありました.
ちなみに,あえて立派な(壊れない)看板にしなかったのは,看板の補修や作り直しを必要とすることで,次世代に断層の情報を継承していくことがねらいだそうです.



さて,この崖(標高差)だけで断層と判断できるのか?
というのは難しいところだと思いますので,周辺の地形図,CS立体図を掲載しておきます.

上段図:黒矢印線が断層のある場所です.赤丸印に断層鞍部(こちらを参照
(「建設技術者のための地形図読図入門」第4巻より引用))があるのが分かります.
    また,図の中央やや左にある谷(青線)が屈曲しているのが分かりますね
中断図:地形図をCS立体図にしたものです
下断図:何も書き加えてませんので地形判読してみてください


鳥瞰図で見てみると以下の様になります.


いかがでしょうか?
実際の露頭での観察,地形図,立体図,鳥瞰図で断層地形をイメージでつながりましたでしょうか?
断層調査は地形の情報も大切ですので,現地調査に加え机上調査も必要となります.

断層崖とその周辺の地形を紹介してみました.
次回は,断層露頭についてご紹介いたします.

【結果報告 その1】 令和2年度(2020) 応用地質学講座(阿寺断層巡検)

令和2年の応用地質学講座は,阿寺断層の巡検を行いました。
当日の様子をお知らせいたします。

<概要>
開催日時:令和2年12月4日 (金) 10:00〜16:20
場 所:岐阜県 恵那市
講座名:阿寺断層巡検
対 象:地質技術者・土木技術者(初級〜上級)
講 師:安江 健一 准教授(富山大学)

午前中は座学を行い,午後からは断層露頭を前に現地で解説して頂きました.
まずは,座学の様子から.

座学は,阿寺断層の概要と午後から見学に行く場所の説明です.

座学の会場として使用させて頂いた「加子母総合事務所」からは,断層地形である閉塞丘と三角末端面が見られました.

閉塞丘は,下図の「I」で,三角末端面は,下図の「B」のことです.
(「建設技術者のための地形図読図入門」第4巻より引用)

(クリックで拡大します)

下図で,黄色い矢印が閉塞丘で,赤い矢印の先が三角末端面です.
図は,加子母総合事務所から見える景色(上),立体地形図(中),立体CS図(下)となっています.


(クリックで拡大します)

地形図で見てみると下記の様になります.

(クリックで拡大します)

尾根が連続せずに分離している様子と,尾根の末端が三角形のようになっている様子が分かります.
また,三角末端面の斜面と平坦地の境界が直線上になっているのが分かります.

「図19.2.23」では1枚(または条)の断層で閉塞丘と三角末端面を形成していますが,ここでは,「閉塞丘を形成する断層」と「三角末端面を形成する断層」の2枚(または条)の断層で地形が形成されています.
ただ,三角末端面を形成する断層は確認されておらず「推定断層」とされているようです.

長くなりそうですので,現地見学の様子の記事は,ここで一旦区切ります..
(安江准教授より,断層の数え方は「本」より「枚」または「条」が良い,とご指摘いただきましたので修正いたしました.2020/12/23)

【結果報告】 令和元年度(2019) 応用地質学講座(現地踏査実習)

日本応用地質学会 中部支部では、毎年応用地質学講座として地形学やボーリングコアの観察などの座学・実習を行っております。
令和元年は,現地踏査実習ということで実施いたしました。
当日の様子をお知らせいたします。

<概要>
開催日時:令和元年10月11日 (金) 10:00〜15:30
場 所:岐阜県 瑞浪市
講座名:「現地踏査」(ルートマップ作成,走向傾斜,露頭での柱状図の書き方等)現地での実習
対 象:地質・土木技術者(堆積岩を対象に地質学的および応用地質学的な基礎的内容)
講 師:竹内 誠 教授(名古屋大学)
    吉田 英一 教授(名古屋大学,現日本応用地質学会中部支部長)
    大谷 具幸 教授(岐阜大学)

全員無事に集合しましたので,まずは吉田支部長より概要説明です.


現地では,6〜7人/班とし3班に分かれて講習を行いました.
講習は,○現地で柱状図作成 ○地質の風化や変質などについて ○地質構造,堆積岩の基本などについて,と3つのテーマに分かれてそれぞれ学習して頂きました.
少人数にすることで質問しやすく,また内容の濃い時間を過ごしてもらえるようにいたしました..


竹内教授に担当していただいた,柱状図作成の様子です.
限られた時間であったため駆け足の講習でしたが,大切なことはしっかりと教えて頂きました.
中部支部の幹事も,補助としてそれぞれの班について行きましたが,豪華な講師陣,実践的な内容であることが羨ましかったです.


吉田教授による,岩石の風化などに関する講習です.
最近解明された球状コンクリーションに関する最新情報などのお話しもあり,とても興味深いものでした.


大谷教授による,地質構造や堆積岩の基礎のお話しです.
基本的なことをしっかりと現地で講義して頂き,それをすぐに現地で確認するという,地質を学ぶには最適な環境だったと思います.

雨に降られることも無く,無事に終了することができました.

最後に記念撮影をして終了いたしました.
参加して頂いた皆さん,ありがとうございました.
お疲れ様でした.

本日の講習が,皆さんの今後に役立てば幸いです.


平成30年度(2018) 応用地質学講座【結果報告】

日本応用地質学会 中部支部では、毎年応用地質学講座として地形学やボーリングコアの観察などの座学・実習を行っております。 平成30年はボーリングコア観察ということで実施いたしました。
当日の様子をお知らせいたします。

<概要>
開催日時:平成30年10月26日 (金) 13:00〜17:00
場 所:名古屋大学博物館 講義室
講座名:
「ボーリング柱状図作成およびボーリングコア取扱・保管要領(案)・同解説」改訂点の
                                   説明と留意点
座学およびボーリングコアの観察
対 象:地質・土木技術者(学会員以外からも参加していただきました)
講 師:照屋 純(ボーリング柱状図標準化委員会委員(全地連),中部支部役員等  

当日は、前半に座学を、後半に実習を行いました。 実習では、ボーリングコアが掘り出された直後から観察までをイメージして、コアパック(ボーリングコアを包んでいるビニール)を剥がして、コアを洗浄するところから体験していただきました。 実習では、様々な方からのご厚意でコアを提供していただきました。この場をお借りしてお礼申し上げます。


さて、実習風景です。 座学の写真は撮影し忘れましたので、いきなり実習中の写真からです。 概要説明の後、それぞれに柱状図を作成していただくことを最終目標として、各々観察していただきました。


まずはコアパックを剥がして、コアの洗浄からです。


講師に説明してもらいながら観察の仕方を教わっています。


柱状図を作成中は、受講者がいつでも質問できるように、講師陣は巡回しています。 業務で日常的にボーリングコアの観察の機会はあるものの、観察の仕方などを丁寧に教えてもらう時間がない、というのが実情かと思いますので、このような機会が皆様のお役に立てれば幸いです。


<アンケート結果>
参加していただいた方々に記入していただいたアンケート結果をお知らせいたします。






【結果報告】平成29年度(2017) 応用地質学講座


開催日時:平成29年6月16日(金)10:00〜17:00
場 所:名古屋大学博物館 講義室
講座名:応用地形判読講習会(座学および実体視鏡での観察)
講 師:梅本和裕(中部支部,国際航業(株))
    小野田 敏(本部・応用地形研究部会,アジア航測(株))
    小林 浩(本部・応用地形研究部会,朝日航洋(株))
    永田秀尚(中部支部・応用地形研究部会,(有)風水土)
CPDH:5.0
参加者:会員40名

今年度は,初心者向けの地形判読技術の講習を行いました。
地形判読技術は,地形図を読図することで地面の下の情報を推測することができるというものです。
近年は「応用地形判読士」資格の設立など,その重要性を再認識する動きが高まってきているようです。
ですが,業務として地形判読を行うことが少なく,また地形判読技術者も少ないために,学ぶ機会の少ない若手技術者の育成ということで,今回の講習の題目といたしました。
講習会参加の募集を開始してから10日ほどで定員に達したことからも,注目の高さがうかがえました。
今回は地形判読に長けた講師陣のもと,実技を取り入れた講習を行いましたので,その様子を紹介いたします。

【本日のスケジュール】
10:00 〜 10:20 はじめに
10:20 〜 12:00 2.5万分の1地形図の判読
12:00 〜 13:00 昼休み
13:00 〜 14:55 空中写真判読
14:55 〜 15:05 休憩
15:10 〜 16:40 高精度地形図の判読
16:00 〜 17:00 まとめ・質疑応答
17:30 〜 交流会


吉田支部長の挨拶で開会です。


2.5万分の1地形図の判読です。まずは講義を受けていただきました。


講義の後,実際に地形図の読図を行っていただきました。
実技中は講師の方が巡回し,疑問点などがすぐに質問できる状況で行っていただきました。。
(個人的には,このように恵まれた環境で地形判読が学べる参加者の方々が大変羨ましかったです!)


お昼休み後は,空中写真判読の講義と実技でした。
空中写真判読は,裸眼での立体視ができるかなどでグループ分けをし,各々のレベルが近い方々で実技を行って頂きました。


空中写真は,立体視をするときに並べる方向や向きがあるという基本的なことも学んで頂きました。


さて,本日の最終講義は「高精度地形図の判読」です。
昨今,航測会社さんが「いかに見やすい地形図を作るか」ということに注力して頂いております。
そのおかげで,様々な地形を読み取りやすい地図ができてきており,その中の一つを用いて講義を行って頂きました。



地形判読に関する基本的な講義と実技をおこなっていただき,あっという間に終了の時間となりました。
中には,実技の時間が物足りなくて二日間やっていただきたいとの声もあり,企画・運営側としては大変嬉しいお言葉であったとともに,裏を返せば時間が足りなかったのかな,と反省いたしました。

参加してくださった方々にはお礼を申し上げるとともに,是非とも今後の業務に活かして頂けるようお祈りいたします。

また,お忙しい中,講習会の資料を準備し,講師を引き受けてくださった講師の先生方には厚くお礼申し上げます。

加えて,会場の手配,実体視鏡の準備等々に奔走して頂いた中部支部役員の方々,本当にお疲れ様でした。



さて,こういった講義の場ではどうも質問しにくい,もう少し講師の方にお話を伺いたい,という事もあるかと思い,今回は懇親会を開催することにいたしましたので,その様子もお知らせいたします。


吉田支部長に乾杯の音頭を取って頂きました。
たくさんの若手技術者に参加して頂き,本当にありがとうございました。


さて,お気づきの方もおられるかもしれませんが,懇親会の会場や講義室の壁には何枚かのポスターが掲示されています。
これらは講師の方々が学会発表されたポスターや,地形に関する最近のポスターです。

懇親会では,このポスターの解説や議論をしていただき,さらに地形に関する知識を習得できるようにしてみました。

実は,このポスターで取り上げられている場所(地形)は,本日の講習会の題材として取り上げられたものもあり,基本から最新の研究結果まで学べるようになっていたんです。(工夫して頂いた講師の先生,ありがとうございました!)

このように,1日という短い時間ではありましたが,受講者の方々には内容の濃い1日になれば,と思い準備いたしました。
今後は,アンケート結果などをふまえ,より魅力的な講座にしていきたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。



【アンケート結果】(6/24追記)

講習会の参加者に記入して頂いたアンケート結果の一部を掲載いたします。


おおむね好評という結果になりましたが,「もう少し時間が欲しかった」などのご意見もあり,今後の企画に反映させていきたいと思います。
アンケートにご協力頂きまして,ありがとうございました。

2017年06月18日 (Y.H)

【結果報告】平成28年度(2016) 応用地質学講座


開催日時:平成28年7月15日(金)11:00〜16:30
場 所:名古屋大学博物館 講義室
講座名:構造物基礎における岩盤分類の考え方について
    (座学およびボーリングコアの観察)
対 象:初級者(若手地質・土木技術者)
講 師:江口 貴弘(岩盤分類再評価研究小委員会(第二期)
    都築 孝之(同上)
CPDH:4.0 

参加者:会員35名,非会員5名



今回の講座は,関心の高い内容であったことや,メーリングリストを使ったお知らせということもあり,募集から3日で定員に達しました。
加えて,キャンセル待ちの方が5名おられたということで,関係者一同,感謝するとともに募集からもれてしまった方々に申し訳なく思っております。また,参加してくださった皆様にはお礼申し上げます。

当日の様子は以下の写真でご覧ください。


都築講師による講義


江口講師による講義


座学の様子


コア観察実習風景です.大盛況ですね!


講師が巡回していますので,疑問に思ったことをその場で質問することができます.
このような機会はなかなか無いと思います.

参加者からのアンケート結果はおおむね好評でした。

ありがとうございました。

(Y.H)

2016年07月15日

【結果報告】平成27年度(2015) 応用地質学講座



平成27年度 応用地質学講座
応用地質学講座
【日時】 10月2日(金)10:00-15:00
【場所】 岐阜県丸山ダム湖畔
【テーマ】 斜面の土木地質的な見かた

2015年10月02日

【結果報告】平成26年度(2014) 応用地質学講座



応用地質学講座
【日時】 6月13日(金)10:00-16:30
【場所】 名古屋大学博物館 講義室
【テーマ】 地下水の調査解析方法

応用地質学講座(PDFファイル

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