【結果報告】 令和3年度(2021)応用地質学講座 平地・丘陵地の応用地形判読講座

令和3年の応用地質学講座は,オンラインでの地形判読講習会を12月3日に行いましたので,その様子をご紹介いたします.
 応用地形判読講習会は過去にも実施しておりますが,人気もあり,また応用地質学には欠かせない分野という点で今年も実施いたしました.

当日のプログラムは以下です.
1部:地形判読講座をはじめるにあたり (中部支部役員:応用地形判読士)
2部:低地・河川・海岸の地形 (講師:西村智博氏 国際航業株式会社)
3部:平地周辺および丘陵地の地形 (講師:永田秀尚氏 有限会社風水土
質疑応答

当日の流れに沿って講座の様子をお知らせいたします.

1部では,中部支部の応用地形判読士資格取得者4名による地形判読のガイダンスとなるお話しでした.

地形図とはどんなもの?というお話しから...


現在では,デジタル地形ツールを利用して地形を視覚的に分かりやすく表現することができるようになった,という最新のお話しが第1部でした.



2部:低地・河川・海岸の地形では,座学によって低地の地形判読の基礎を教えて頂き,その後は少人数に分かれて地形判読実習実習を行っていただきした.
今回の講習会はZoomを使用したオンライン講習会でした.
Zoomはブレイクアウトルームという,少人数に分かれていくつかの「部屋」を設定することができます.
実習は,この機能を利用して,6つの部屋に分かれて行いました.
各部屋には「管理人」を配置し,管理人は質問があれば適時お答えする,また講師への質問を仲介する等を行うとともに,講師は各部屋を巡回して質問を受け付ける,という形で実習を進めました.

PCの画面の写真ですが,各部屋での実習の雰囲気が伝わればと思います.
PCのカメラを手元に向けることができる方には,作業中の様子を画面に映してもらっていました.

最初は河川の地形判読の座学と実習でした.



実習後は,各部屋の代表に地形判読結果を発表してもらい,講師の方のコメントを受けるということをしていただきました.



次は海岸の地形です.ここでは海岸地形を読み解くコツを教えていただきました.
ここでは,いくつかの川が海に流れ込んでいる場所を取り上げました.
山地と平地の境界は直線状になっており,海岸付近と山地の間に人が住んでいるというのが特徴的ですね.
(クリックで拡大します)

(地理院地図HPより作成)


地理院地図のHPで,地形図に土地条件図25000を重ねたのが下図となります.
これだけでも様々なことが分かりますね.
(クリックで拡大します)


(地理院地図HPより作成)

実際の判読実習状況です.



2部の最後には,地形図で判読した地形が実際はどのようになっているか,を確認するために現地の写真を見せて頂きました.
(講師の西村様.お忙しい中,わざわざ現地の写真まで撮影していただきありがとうございました.この場をお借りして御礼申し上げます)


3部:平地周辺および丘陵地の地形でも,2部と同じように座学の後に実習という流れでした.
実習では,地形図の判読に加え,地理院地図HPを利用して地形を読む手法も行いましたので,その一部をご紹介します.

まずは地形の色別標高図の作成です.
例えば,日本全体で色別標高図を作成すると下図の様になり,中部地方に高い山が集まっているのが分かります.
(クリックで拡大します)


(地理院地図HPより作成)

上図と同じ色彩で,富山県の黒部川扇状地を表すと下図のようになり,よく分かりません.
(クリックで拡大します)


(地理院地図HPより作成)

しかし,同じ位置で標高の色分けを変えるだけで下図のようになり,綺麗な扇状地が見えるようになります.
(クリックで拡大します)


(地理院地図HPより作成)

また,養老山脈と平地の境界の地形図では,山地から川が流れて扇状地を形成しているのが分かりますが,いくつかの扇状地が重なり合っている合成扇状地のため判読が難しいです.
(クリックで拡大します)


(地理院地図HPより作成)

そこで色別標高図に陰影起伏図を重ねたものを作ってみると,地形図だけよりははるかに扇状地が判読しやすくなります.
(クリックで拡大します)
ここでは扇状地のある部分に注目することにより,「どこから氾濫するか?」といったことが読み取れることも教えていただきました.(応用地質学は社会に役立つことを目指した学問ですのでこういった知識は大変重要です))


(地理院地図HPより作成)


このようなツールを使いながら,実際に地形判読を行っていただきました.
目の前に自分のパソコンがあり地理院地図が利用でき,かつ地形図もで地形判読を行い講師(熟練者)からの助言ももらえる,という状況は普段の業務にも似ている状況ではないでしょうか.
実際に集まって行う講習会であれば,PC環境,ネットワーク環境,1人あたりのスペースが確保されないと実現できない状況ですが,オンライン講習ではそれが可能となりました.


3部でも実際に段丘の地形を判読していただきました.



地理院地図HPも利用して判読を行う方もおられました.




判読実習の最後は講師の解答例を見せていただきました.


以上が,令和3年度 応用地質学講座の内容でした.
10時から17時までと長い時間でしたが,あっという間に感じましたが,受講者の方々はいかがでしたでしょうか.

コロナ禍ということもあり,次回の中部支部の行事は来年度となります.

少し早いですが,皆様,よいお年をお迎えください.
2021年12月14日 (Y.H)