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平成26年度 定時社員総会およびシンポジウム

日時

平成26年6月6日(金)
11:00〜12:00 定時社員総会
13:00〜18:05 特別講演・シンポジウム
18:15〜    意見交換会(会場:柏キャンパス内「プラザ・憩い」,会費:5000円)

会場

柏キャンパスまでのアクセス

東京大学柏キャンパス 新領域環境棟FSホール
千葉県柏市柏の葉5-1-5
柏キャンパスへのアクセス(東京大学ホームページ)
つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅から東武バス(西柏04または西柏03)東大前または東大西停留所下車
※会場には駐車場がありませんので,公共交通期間をご利用ください

資料集代

一般会員3,000円,学生会員2,000円

CPDH

5時間(シンポジウムを聴講の場合)

定時社員総会

総会の構成員は役員および代議員ですが,当学会員であれば総会を傍聴することができます

シンポジウム

テーマ:「土砂災害の軽減に向けて−大規模斜面変動の前兆と評価−」

主催

一般社団法人日本応用地質学会

プログラム

1.シンポジウム開催の主旨

本シンポジウムは,地すべりの初生と評価に関する研究小委員会と災害地質研究部会の共同で開催し,近年問題となっている地すべりや深層崩壊などの斜面災害をテーマといたします.両委員会は,最近発生した斜面災害事例の分析も踏まえ,地すべりの前駆現象の運動様式や変形進行過程,初生地すべりの発生メカニズムについて研究することにより,その調査解析・評価手法を確立するとともに,今後の斜面災害に対する防災に役立てることを目標に活動を続けています.
 今回は,両委員会を通じて議論されてきた内容に基づき,土砂災害を軽減させるべく,斜面移動の前兆現象の把握とその評価の手法についての成果を紹介します.

2.プログラム

趣旨説明
13:00-13:10 地すべりの初生と評価に関する研究小委員会 長谷川修一 委員長
招待講演・特別講演
13:10-15:45 招待講演「豪雨による斜面大規模崩壊と対応」東京大学大学院 東畑 郁生 教授(地盤工学会副会長)
特別講演「深層崩壊の場所の予測と今後の研究展開について」京都大学防災研究所 千木良 雅弘 教授(日本応用地質学会会長)
話題提供
15:45-18:05 (1)「地すべりの初生に関する研究を斜面災害軽減に役立てるには?」井口 隆・災害地質研究部会
(2)「地形とその変位率から読み解く初生地すべり」小坂英輝
(3)「航空レーザ計測と空中電磁探査によるトップリング崩壊斜面の評価 〜高知県加奈木崩れを例として〜」河戸克志・小野田敏・長谷川修一・野々村敦子
(4)「岩盤重力変形の認定:フィールドおよびコア観察」 加藤靖郎・永田秀尚・野崎保・平野勇
(5)「計測記録から見た斜面の初生変動に関する検討」上野将司・阪元恵一郎・田中姿郎・坂島俊彦
(6)「変位率等による斜面安定度の推定」小野田敏,高山陶子・ハスバートル
(7)まとめ「応用地質学の視点に基づく地震と降雨による斜面崩壊危険度の指標の提案に向けて」長谷川 修一・ 野々村敦子

実施報告

実施概要

地すべりの初生と評価に関する研究小委員会と災害地質研究部会のご協力の元にシンポジウムを開催いたしました.約160名の多数のご参加をいただきありがとうございます.各講演の概要は以下のとおりです.詳細は特別講演およびシンポジウム予稿集としてまとめられています.是非ご一読いただけたら幸いです.予稿集の購入に際しては学会事務局までお問い合わせ下さい.

招待講演

「豪雨による斜面大規模崩壊と対応」

東畑 郁生(東京大学大学院)

 平成25年10月16日に起きた伊豆大島豪雨災害について,今後の教訓として残すため,地盤工学会を含む合同調査団で行われた調査研究を題材に,土砂災害の軽減に向けて取り組まなければならないことについて講演された.その中で以下の着目点についての指摘と説明を頂いた.
1)源頭部は深さ50cm程度の表層崩壊であり,御神火スカイライン背面自然斜面の遷急線以低でパイピング・崩壊として生じている.また道路法面は湧水や変状は無く,道路建設が原因とは見られない.
2)源頭部表層崩壊量よりもその下方で生じた侵食を受けた土砂量の方が圧倒的に多い.
3)18世紀以降に複数回の崩壊履歴が確認された.同様の災害は今後も再発する可能性がある.
4)豪雨斜面災害に対する対応では,ある程度まではインフラで対応できるが、それ以上の規模は避難というソフト対応が必要である.ただし真夜中の豪雨時に強制避難を命じることは難しい.
5)避難に対応するためには,個別斜面の危険を察知できる,小規模計器を多数設置する等の面的なモニタリングが有効と考える.

特別講演

「深層崩壊の場所の予測と今後の研究展開について」

千木良 雅弘(京都大学防災研究所)

近年の研究成果から深層崩壊の前兆と考えられる地質構造・重力斜面変形が明らかになり,かつ航空レーザー測量技術の発達は微地形の分布を詳細に示し,深層崩壊の前兆を捉えられることが分かってきた.千木良前会長の特別講演では,おおきく降雨による深層崩壊の発生場についてと地震時の深層崩壊の発生と先行する降雨の関係についてのご講演をいただいた.講演のなかで、深層崩壊の複数の事例に基づき、崩壊発生箇所の特徴的な地形・地質構造を示され,今後の私たちの調査・研究の参考になる非常に有意義なものであった.また今後の展開として実験的な検討にもとづく深層崩壊の原因となる緩慢に変位する地層の特定や,最近のリアルタイム降雨観測技術の発達により斜面内部での浸透水・地下水の挙動を崩壊予測につなげることなどが挙げられた.

話題提供

(1)地すべりの初生に関する研究を斜面災害軽減に役立てるには?

井口 隆(防災科学研究所)・災害地質研究部会

 本発表は,シンポジウムの共同実施である災害地質研究部会からの報告で,斜面災害軽減に役立つという幅広い視点から,今後の研究の方向性について述べられた.はじめに,「地すべり地形分布図」等,既存図面での初期的変動斜面の的中度について述べられた.また,今後の研究の方向性として,「地質地帯区分の精密化」,「時空条件比較解析手法の多面的応用」,「干渉SARによる変動計測」,「数値地形画像マッチング法」などが紹介された.

(2)地形とその変位率から読み解く地すべりの形成過程

小坂英輝(環境地質)

 本発表では,まず,初生地すべりについて,地すべりの発生過程や発達段階での位置づけが概説された後,すべりに伴う地形変化について「バランス断面法」の手法が紹介された.次に地質・地形種と変位率の関係について地質主ごとの傾斜と変異率の関係の整理結果から,初生地すべりの目安を判断する考え方が示され,どの程度変形が進行すると初生地すべりが発生するかについて述べられた.

(3)航空レーザ計測と空中電磁探査によるトップリング崩壊斜面の評価 〜高知県加奈木崩れを例として〜

河戸克志(大日本コンサルタント)ほか

 本発表は,初生地すべりや深層崩壊の発生の可能性がある斜面の地形的特性や地質特性を把握するための調査解析・評価手法の一つとして事例紹介されたものである.比抵抗平面及び断面図から、トップリングによる緩みの概略的な広がりや層厚の把握が可能と述べられた.また,今後の課題として,大規模土砂移動の前駆現象を現す微地形要素の種類と形態との比較や深層崩壊の発生の恐れのある斜面の抽出と規模を推定するための表現手法を検討し,最終的には崩壊土砂量を概算できるようにしたいと述べられた.

(4)岩盤重力変形の認定:フィールドおよびコア観察

加藤靖郎(川崎地質)ほか

本発表では,岩盤重力変形の認定のための手法や着目点を、地表踏査での露頭観察やボーリングコア観察の留意点を含め観察事例とともに述べられた.問題点として,観察により重力変形構造が認定できるとはいえ,岩相が類似しているものが風化を受けた場合は識別が難しくなることから,様々な事象を慎重に検討することが必要と述べられた.

(5)計測記録から見た斜面の初生変動に関する検討

上野将司(応用地質)ほか

 本発表では,トップリング,切土法面での地すべり,ダムの長大切土などの法面初生変動に関する計測事例を詳細に説明して頂いた.また,豊富な計測データに基づいた「変位速度と崩壊余裕時間」,「変位速度からの安全率評価」,「安全率と崩壊余裕時間」など大胆なモデルの紹介があった。

(6)変位率等による斜面安定度の推定

小野田 敏(アジア航測)ほか

 本発表では,地すべりの発達に伴う地形変化を考慮したタイプ区分を示された.また,「斜面の傾斜角度」,「変位率」および「ひずみ率」を用いた斜面安定性の定量的な評価についての報告があった.一方で一義的な定量的評価だけでなく,現地調査やコア判定の重要性についても注意喚起がなされていた.

Fまとめ:応用地質学の視点に基づく地震と降雨による斜面崩壊危険度の指標の提案に向けて

長谷川 修一・野々村敦子(香川大学)

 本発表では,トップリングによる大規模な岩盤のゆるみを空中電磁法による比抵抗情報によって抽出し,さらに地震動の増幅のしやすさ地形効果を併せて地震時の深層崩壊危険度を計算することで,地震による深層崩壊危険斜面を抽出する手法が提案された.また,谷密度を指標として利用し,土砂災害が発生する雨量指標および最大崩壊土量を推定し,流域別の土石流危険度評価手法の提案と,他手法との比較検討による実用化へ向けての課題が述べられた.

(文責:事業企画委員会 上野 光,緒方信一,田中姿郎,原 弘,原田政寿,宮原智哉)

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